彼の人は不思議な人だった。星辰を振り仰ぐ彼の人の耳には常人に聴こえぬものが聴こえ、視得ぬものが視えた。人の来し方。去りゆく先。私には、視えなかった。 豪族たちは争い。下々の者たちは飢え。貴賤の別なく人は病であっけなくこの世を去る。 そんな世に何の思いもなかった。 ただ、それを救わんとする彼の人の、傍にだけは。 ずっと。 在りたいと思った。
2011-10-25 13:18:03 +0000