その日の夜はやけにざわざわしていた。
その時まではカゲ使いじゃなかったしカゲなんてどうでもいいと思っていた。
全てのカゲが消えてしまえばいいと思ったことさえもあった。
わたしの両親はカゲの研究をしていた。
どういった研究なのかは詳しくは知らないけれど小さい頃からずっと
両親が家に居た試しなんてなかった。
だから家に居ないのが普通なのだ。そう思い込もうとしていた。
寂しいなんて嘘だよ、悲しいなんてないよ。だから大丈夫。
それも思い込もうとしていただけなのかな
両親が本当は三週間前のあの日から行方不明で、
それを祖父母が自分に隠していたことが少なからずとも悲しくて。
今までそういった隠しごとなんてなかったから。
何日か部屋に閉じこもってみたけどなかなかいつも通りになれなくて
ただ誰とも会いたくなくて学校にも行かなくなった。
その日はとにかく夜騒がしいと思ったんだ。
誰かが騒ぐ音がするでもなくただ直感的に。
ざわざわ ざわざわ
ざわざわ ざわざわ
しばらく続くのかと思ったら一瞬を境に静かになり、
次の間に聞こえないはずの音がした
どれくらい時間が経っただろうか、気がついたら、目の前にそれは
浮かんでいた。ふわふわと。
お父さんの使っていた白衣…
違う
違う
違う!
これは
これは わたしの 殻(カゲ)だ
■ 柚梨【illust/20876199】 ■ぴくカゲⅢ(企画終了しています)【illust/20039532】
2011-09-13 17:55:14 +0000