「兵装ユニットの動作試験終了。重大な不具合の発生はありません」
その言葉を契機に、戦闘指揮所を安堵のため息が満たしていった。
「まったく、益体もない艦を押しつけられたものだ」
口の中でこもる程度の声で艦長と思しき茫洋とした顔つきの男は愚痴をこぼしていた。
まったく、何とも扱いにくい船だ。しかし。
男は先ほど行った試験の結果を思い浮かべる。標的として用意された木造船が一瞬で吹き飛ぶ様子が脳裏をよぎる。
(制御系が異常なほど複雑な代わりに火力だけは高いんだよな)
まあいい。
腹の中を探らせないよう、ことさら快活な声で帰投の命令を下す。
「複合生体艦『コンポーシトゥス・テトラ』これより帰投する」
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品種改良を行い巨大化させた撞木鮫をベースとして複数のイノリイソギンチャクを融合させた個体である。
本体と兵装ユニット(イノリイソギンチャク)を統一して制御するシステムが異常なほど肥大化/複雑化したため、不具合が続出し実戦部隊への配備は見合されていた。
銀海海戦後、制御システムの動作もある程度安定してきたため実戦部隊への配備が決定された。
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イノリイソギンチャクについて
銀海某海域に生息する定着性の刺胞動物。
口腔付近に存在する詠唱器官を使用して魔術を発動させ、上空を飛行する海鳥などを撃墜して捕食する。
名前の由来は、魔術発動時に聞こえる声が祈り声に似ていることから。
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姉さん!ファンタジーです!!(illust/16194969)
ロゴお借りしました(illust/16219552)
2011-03-02 18:47:26 +0000