君と過ごす休日

ふまる

オレ毎年誕生日スルーされがちな閻魔大王なんだけど今年前半の閻魔賽日の話。
年二回の休暇が近づいてたのを今回もちゃんと意識してたのか、秘書の鬼男くんが数日前からどことなくそわそわしていた。
いつものルーティンワークに慣れてるオレとしては中途半端に一日ぽんと休暇が与えられても
ぶっちゃけそこまで楽しみってほどでもないんだけど思いのほか鬼男くんとしては大事だったみたいで
当日、今朝になってオレが目を覚ましてみるとなんと鬼男くんがあったかい余所行きの格好で完全装備して立っていた。
驚いていたのもつかの間、あれよあれよとオレも身支度してあったかい格好で一緒に下界へ連れて行かれた。
行き先を聞いてもあいまいにはぐらかしたまま手を引く鬼男くんの横顔がどことなく嬉しそうだったのでとりあえず彼の好きなようにさせることにした。ミステリーツアーも良いものだ。
そうして連れて行かれた先は水族館だった。その日は雪が降っていたからかお客さんもほとんどいない貸し切り状態で、大型の水槽を通して静かにオレ達へふりそそぐ光は何だか神秘的で、
まるでこの世にはオレと鬼男君しかいないんだよと祝福してるような錯覚を覚えてどこかくすぐったくなった。
一番奥のぐるっと水槽に囲まれた部屋まで進むと、それまで手を引いてた鬼男くんがふいにこちらを向いて
「何だか貴方と僕、この世に二人きりみたいですね」と、はにかみながら言った。
するとオレはどうしようもなく嬉しくなって気付くと鬼男くんを抱きしめていた。そして顔を近づけると彼もまたそっと目を閉じた…が、次の瞬間、鬼男くんが爆発した。
まぁさすがに爆発したのは嘘だけど、オレにデレてくれたのは一応嘘。でも水族館に行った事だけはマジで嘘。
ただ朝起きたら鬼男くんが横にいたことだけは本当に嘘。毎年誕生日スルーされがちなのは本当。誰か祝ってくれ。

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2011-01-16 12:28:58 +0000