「高度、進路共に良し。現在気温マイナス17℃」「冷えるな…銃座の皆にコーヒーを配ってやってくれ」
「了解です…にしても視界が悪いですね」「冬ともなればな…最も、一番辛いのは」
「彼ら…ですか」ブリッジの窓からは殆ど見えることのない直上を見上げながら副長は呟いた。
今にも雪が降り出しそうな暗い雲で覆われた空を風を受けながら飛ぶマエストロ。その苦労は計り知れない。
「キャプテン。風で若干流されています。予定より少し遅れるかと」
地図を広げた机の上でコンパスを躍らせていた航海士の報告を聞き、
キャプテンと呼ばれた中年の男性はため息をつきながら帽子を被りなおした。
「やれやれ…僅かな風でもこの大きな図体では敵わんな」
「大型に部類されますからね。旧式とは言え」
「セレン航海士。どれくらい遅れる?」
「詳細は出ませんが恐らく1時間ぐらいは」
「遅れんぼうのサンタクロース、と言う訳か…」
「キャプテン。巡航速度を上げますか?」と、操舵士がテレグラフ(速力通信機)を撫でながら問いかけてきた。
「そう言う訳にも行かんよ。無理に遅れを取り戻して会社の経費を傾ける訳にはいかない」
「了解。失礼しました」
「相手さんにも風で遅れる事は判るだろう。何よりこの天気だ」
胴体に大きな文字を見せながら曇天の夜明けの中を、ニエーバレーナが進んでいく。
灰色の風船サンタは鈍足のようだ。
…と、他愛も無い妄想キャプションを添えて空楽の皆様、ハッピークリスマスです。
船体の真横に貼ってあるのは【frohe weihnachten】。ドイツ語でメリークリスマス。
2010-12-25 04:52:36 +0000