今敏監督の訃報を耳にして悲しさと当時に突然、氏の作品を忘れてしまうのではと怖くなり、監督作全作を観返し改めてその作品の素晴らしさに感嘆すると共に、これから氏のいない世界が始まってしまたという寂しさに囚われました。◆「モーツァルトの音楽は昔から宇宙に存在し、彼の手で発見されるのを待っているものを掴んだかのように純粋だ」アインシュタイン。彼女、「妄想代理人」鷺月子を見ているとこの言葉を思い出します。幼少時、思いがけず少女から女性へとなる瞬間と同時に、おままごとよろしく自らの子供と見立てて可愛がっていた飼い犬の死に図らずも立ち会ってしまう。(小動物の死体、というのは胎児を連想させるとも聞いたことがあります)。それ以来、感情を表すのはおろか、思考することさえ諦めてしまった彼女がその生い立ちを踏まえた後に生まれたマスコット、マロミ。それが企業が提唱する「癒し」というライフスタイル、そんな幻想に酔っぱらっていないととても生きていけない世の中に認められてしまうという天文学的な確率の出会いに巻き込まれ翻弄されてしまう。それでも彼女は何を見ても聞いても初めて知ったような表情をしていたけれど、こんな時くらいは微笑ませてあげてもいいはず。◆今敏監督、お疲れ様でした。静かにお休み下さい。あなたの作品のどれもが大好きでした。ご冥福をお祈りします。
2010-08-28 18:37:54 +0000