ウマ娘プリティーダービー より スペシャルウィークとグラスワンダーです
今週末はいよいよ有馬記念。私にとって忘れられないのは1999年のスペシャルウィーク vs グラスワンダー。
そんな二人の激闘を思い出しながら出力してみました。SSと一緒にどうぞ。
有馬記念、最後の直線。
私は喉が焼けるような息の中、足を叩き込む。わずか数メートル先にゴール。けれど、外から迫りくるスペちゃんの影は、鋭く背中を刺し続ける。
あと一歩、もう一踏ん張り! 私は全力を込めるが、次の瞬間、視界の端でスペちゃんの勝負服が一瞬、前へ出た気がした。
ゴール板を駆け抜けるその刹那、私の中で確信にも近い不安が弾ける。
「負けたかもしれない…」
わずかな鼻先の感覚、それが私に敗北を囁く。周囲の観客席が、微妙な沈黙のあと、どよめきとともにスペちゃんの名前を叫び始める。「スペシャルウィーク、差し切った!」そんな声が耳に突き刺さる。
私は鼻先を軽く歪め、荒い息を吐きながら立ち尽くす。
――観客はもうスペちゃんの勝利を信じている。この熱狂は、彼女が頂点に立ったと確信している証だ。
だが掲示板に結果は出ない。場内アナウンスは写真判定になったことを告げる。
息苦しい沈黙が戻り、私は胸を締めつけられる思いで結果を待つ。スペちゃんもまた、硬い表情のまま、じっと審判の動きを見つめている。
時間が重く伸びて、心の中で叫びが木霊する。
ーーお願い、競馬の神様。この瞬間に、私からすべてを奪わないでほしい。積み重ねてきた日々、刻んだ努力、そのすべてがここで泡と消えるなんて、そんな残酷さはないはず…。
やがて判定が下る。アナウンスが発せられ、全場内が息を呑む。
「1着…グラスワンダー!」
その一言が世界を転覆させた。どよめく観衆は驚愕し、スペちゃんは悔しさと清らかな負けん気を宿した瞳で私を見る。私はその視線を静かに受け止め、胸中で再び神々に感謝する。
――救われた。
ほんの一瞬、自分を見放しかけた運命が、この結果をもたらした。その事実が、私とスペちゃんの宿命的な絆を、いっそう強い炎で包み込むのだった。
2024-12-20 12:19:21 +0000