━━━━━━━━━━━━━━━━━━
七竜暦77年光炎月1週3日
観察地:水竜王国アクアリウス沿岸 深海保護区域B-7
天候 :濃霧 / 水温:18.2℃(平年比+3.8℃)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ 新規観察個体データ
個体識別名 :シーサーペント(命名者:現地漁師たち)
推定年齢 :成体(約150-200年)
性別 :不明
体長 :約32m
危険度 :SS級
特徴的な外見:深い藍色の鱗。背びれに大きな裂傷痕。右目が失明している。
◆ 発見経緯
異常な水温上昇により、サンゴ礁の白化現象が報告された海域の調査中に発見。通常より浅い水深(約200m)で活動していた。Black Starハンターのフレイヤ・バーンブレードと共に潜水観察を実施。
◆ 生態観察記録
▪ 生息環境
水深200-500mの暗黒域。異常な暖流の影響で、本来の生息深度(800-1000m)から上昇を余儀なくされている。サンゴ礁の荒廃した区画付近に留まる傾向が見られる。
▪ 特殊能力
驚異的な圧力耐性と深海での運動能力。片目を失っているにも関わらず、完璧な狩猟能力を維持。水圧の変化を感知する特殊な感覚器官の存在が示唆される。
▪ 社会性
単独行動。他の海洋生物との接触を徹底的に避ける。しかし、白化したサンゴ礁の周辺で執着的な行動を示す。
▪ 食性
大型魚類、イカ類が主食。しかし、今回の観察では通常の捕食行動は見られず。
◆ 考察
深海域からの強制的な生息地変更は、この個体に重大なストレスを与えていると推測される。右目の失明と背びれの裂傷は、おそらく人間の漁具による過去の被害。しかし、この経験が直接的な人間への攻撃性には結びついていない点は注目に値する。
◆ 保護・管理に関する提言
早急な水温異常の原因究明が必要。一時的な保護区域の拡大と、漁業活動の制限を提案。この個体の生息域変更は、より深刻な環境変化の予兆である可能性が高い。
◆ 現地住民の証言
「あの原龍は、10年前から時々姿を見せている。漁具に絡まって目を失ったが、漁師たちを襲うことはない。むしろ、サンゴ礁の異変に気付いたのは、奴が浅瀬に現れるようになってからだ。」
- 老漁師 マリウス・タイドウォッチャー(68歳)
◆ 調査者所感
今回の観察で特に印象的だったのは、白化したサンゴ礁の周辺でのこの原龍の執着的な行動だ。まるで何かを守ろうとしているかのような、あるいは既に失ったものを探しているかのような...。片目を失いながらも生き延び、今度は自らの生息地の変容に直面するこの個体を見ていると、自然界における喪失と適応、そして再生の循環を考えずにはいられない。
フレイヤ氏も同様の見解を示し、この海域の継続的な監視の必要性を強調している。環境の変化は、時として取り返しのつかない喪失をもたらす。しかし、この原龍の姿は、そうした逆境への適応と、新たな生きる道を見出す生命の強さを物語っているように思える。
2024-12-20 06:06:51 +0000