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七竜暦77年光炎月1週2日
観察地:風竜共和国 北部高山地帯 ミストピーク
天候 :晴れ(虹出現) / 気温:12℃
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◆ 新規観察個体データ
個体識別名 :ストームハウラー(命名者:管理局第三調査班)
推定年齢 :15-20歳
性別 :オス
体長 :約28m
危険度 :S級
特徴的な外見:灰青色の鱗。背部に複数の深い傷跡。右翼の一部に欠損あり。
◆ 発見経緯
管理局からの要請で、春の目覚め期に活動を開始する原龍の初期観察を実施。ドラゴン管理局第三調査班と共に、北部高山帯での定点観察中に発見。当該個体は過去3年間この地域で目撃されている。
◆ 生態観察記録
▪ 生息環境
標高3000m以上の高山地帯。急峻な岩壁と氷河に囲まれた地域で、強風が恒常的に吹き付ける。春の訪れとともに氷河が緩み始め、轟音とともに氷塊が崩落する危険な環境。当該個体はこの環境を巧みに利用し、氷河の裂け目を隠れ家として使用。
▪ 特殊能力
強風を操る能力を確認。風を纏って飛行する際、特徴的な咆哮を伴う。この咆哮は他の原龍への威嚇と推測されるが、気流の制御にも関連している可能性あり。
▪ 社会性
単独行動。他の原龍が接近した際は即座に威嚇行動を示す。ただし、小型の飛行生物には無関心。縄張り意識が強く、特に採餌場所の防衛に執着する傾向。
▪ 食性
主に大型の草食獣を捕食。観察中、氷河湖付近で大角羊の群れを狩猟する様子を確認。効率的な狩猟方法を確立しており、風を利用して獲物を追い詰める戦術を駆使。
◆ 考察
春の目覚め期における原龍の行動パターンは、従来の観察方法では十分な記録が困難。当該個体の観察を通じ、気象条件と狩猟行動の相関関係について、新たな知見を得られる可能性が高い。
◆ 保護・管理に関する提言
狩猟範囲が人里に近接しているため、家畜被害の可能性あり。ただし、現時点では人間への直接的な攻撃性は確認されていない。予防的な監視体制の確立を提言。
◆ 現地住民の証言
高山牧畜民のアルド氏(58歳)の証言:
「あの原龍は3年前から現れるようになった。確かに家畜は襲われるが、不思議なことに人は襲わない。ただ、春の目覚めの時期は特に警戒が必要だ。空腹で目覚めた原龍は何をするか分からないからね。」
◆ 調査者所感
今回の観察で特に印象的だったのは、その狩猟方法の効率性だ。ただの本能だけではない、ある種の知性を感じさせる狩猟パターンを示している。しかし、その姿に野生の荒々しさを見出すのと同時に、右翼の欠損や背中の傷跡に、何か悲しい物語を感じずにはいられない。
生きるために狩りをする。そこに善悪の判断を下すことはできない。ただ、私たちに求められているのは、この現実をありのままに記録し、人間と原龍の共存への道筋を探ることなのかもしれない。
2024-12-17 07:08:47 +0000