「やぁ、モルモットくん!今日もご機嫌かねぇ??」
そう私に声をかけるのは担当ウマ娘のアグネスタキオンだ。
「そうでも無いさ。君こそなんだか調子いいようだが」
そう私が答えるとタキオンは「にっ」と笑って答える。
「そうなんだよ聞いてくれ!!実は新しい薬品の試作が出来たんだよ!!是非とも実験に付き合ってくれたまえ!!」
ああ、そうか。
最初はただの好奇心だった。化学をより学びたいと思って工業高校へ進学した。そこで更なる知見を深めてよりその先を見たくなった私は大学へ進み、自身の知的好奇心を満たすため研究に没頭した私は進路のことなど全く考えていなかった。指導教員に叱責を受けた週末、私はたまたまとあるレースを見た。圧巻だった。なんとも言葉には表せない感情が私の心を満たしたのだ。人を超える存在、ウマ娘。ウマ娘は一体なんなんだ。なにがそんなに彼女達を駆り立てるのか。知りたかった。彼女たちの走る理由を知りたかった。
気づいた時にはトレーナー試験を受けていた私は無事合格し、今はこうしてウマ娘のトレーニングに関わる仕事をしている。そして今目の前にいるアグネスタキオンの担当になったわけだが……
「おいモルモットくん!?どうしたんだい!?ボーッとして!!」
おっといけない。つい思考の海に浸ってしまった。
「すまない、ちょっと考え事をしていたよ。ところでその薬品とはどんなものなのかね?」
「うむ、これだよ!」
と言ってタキオンが見せてきたものは薄いピンク色をした粉末だった。
ああ、そうか。私は。
「それは前に縮合重合反応の実験で作っていた試薬かい?」
「ああ、そうだとも。今回はそれをさらに改良してみたんだ」
「ほう、それは興味があるな。早速使ってみよう」
「勿論だとも。ではさっそく試飲してくれたまえ!!」
タキオンは試薬を口へ近づけて飲ませようとするが、私は静止させる。
「まてまて、単に試飲して見た目の観察では実験にならんだろ。きちんと心拍や脳波を測定できる状態でないと」
「それもそうだな。ふぅん、仕方ない。君の言う通りだ。研究室へ移動しよう」
私の前をタキオンが歩く。心做しかスキップしているようにも見える。
「おーい、モルモットく〜ん!早く来てくれたまえ〜」
タキオンの呼び声に応えるべく小走りする。
「まったく君はいつも遅いんだから。ほら、手を出して」
タキオンに手を差し出すと彼女はその小さな手で握り返してきた。
この小さな手に私は何度も救われた。
しかしこれからはその手を汚してしまうかもしれない。
それでも、私は彼女の力になりたいと思った。
だから、覚悟を決めた。
私は
2024-11-21 14:37:41 +0000