目覚めと共に勢いよく全てを破壊したのは良かったものの、身体の状態はひどく悪かった。
着実に身体を蝕むこの毒をなんとかしなければ、皆の元にたどり着く前に倒れるだろう。
少しでも軽減できるよう足元を草花で彩りながら、治す方法を探すべくがむしゃらに迷路を進む。
ある程度進み、L字路を曲がって数メートル先に、三角巾を被り巨大なリュックを背負う鼬がいた。
医務室のような独特な匂いが微かに漂ってている。どうやら軍医とみて良さそうだ。
周りに連れているのは戦災にあった子供だろうか?
いいや、軍人やそれに連なる強さを持っているかもしれない。
まずは声をかけてみよう。
「そこのお前さん、軍医と見て良いのかの?助けて欲しいんじゃが…」
「?!」
こちらの存在に気がつき、鼬が子供達を庇うように前に出る。
「誰っ?!」
「【ARMORED ARMY】所属、ザンカと言う。」
「【ARMORED ARMY】…」
(あ、これはマズったかな。)
所属を復唱し警戒心を通り越して敵意を強める鼬を前に、彼女の不安が強くなる。
「処置をする前に、質問に答えて。」
「て、手短に頼むぞ?見ての通り、余裕は無いからのう。」
「何故貴方たちは【子供】を戦わせるの?誰の命令で?」
何を言って…と口走りそうになったが、答えられなければ最悪戦闘になるだろう。
「子供…というのは年齢でいいのよな?」
「そうよ。」
記憶にある限りメンバーを思い出す。
「隊長どの達は成すべき事があるから。
奇術師どのは自分探しのために戦士の子と歩んでおる。
幼き剣闘士どのはひたすらに戦いたいから。」
ベルには彼が老人のように見えていた。
研鑽を積んだ、いかにもな老兵に見えていた。
「そして、私は」
この一言、この瞬間、その像が突然崩壊した。
「平和な未来で踊りたいから。だから今をなんとかしようと必死なの。」
人一倍、子供に敏感だったから変化に気がついた。
老兵だったその人物は、間違いなく少女だった。
「…えっ?」
今までのは演技?
それにしては、まるで別人のように見えた。
「皆、それぞれの意思で戦いに身を置いておる。戦えないものを無理やり前線に出すような奴らもおらん。全て、【自らの意思】じゃよ。」
「貴女達も…違うというの?大人に言われたのではなく自分の意思で?」
「例えそうであったとしてものう、私なら、その道を選んだ時点で私の目的(もの)だよ。それは否定させない。させてなるものかよ。」
「それでもダメよ!お母さんは、貴女が戦う事を許しません!」
「なるほど、お前さんは子供が酷い目に遭わぬか心配なんじゃな?だから、ワシらの組織の事も懐疑的と。
…本当に、優しいのう。」
「そうよ!だから貴女も」
「なればこそ、ワシを助けてくれんかの?
お前さんから見ればワシは子供かもしれんが、子供ではない。自らの意思で戦うと決めた戦士じゃよ。ワシが行けば他の団員達の生存率も格段に上がる。あとは皆まで言うまでもないな?」
「…その言い方は、ズルいわ!」
「ズルくて結構。それでどうなんじゃ?治してもらえぬのなら、ワシは他所を当たるがのう?」
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【illust/119294539】→【今ここ】→【illust/119485250】
3章のお話です。
大変遅くですが、ベルママに処置してもらう展開を見たかったので描かせてきた抱きました!
キャプションの色はベルさんの視点で【いつもの老人ザンカに見える時】と【今の彼女】で別れております。なお、ザンカ本人は出てきておらず、彼女の演技力のみで再現しております。
なお、ベルママとザンカの相性は間違いなく悪いのでこの後逃げることになるかもしれません。
ここで何もせずとも回復する手段を得ることは確定していますので、不都合あればスルーで構いません。
お借りしました
ベルさん【illust/115766686】
ザンカ【illust/116152917】
2024-11-19 15:01:25 +0000