( 「私はお兄さんのこと、好きですよ」 ← エピローグ )
「あなたー、早く来てー」
「あいよ、コレ運んだら行くよ」
今日は天気もいいし家族でピクニックに来た。
セラと結婚してはや数年がたち、子供たちもすっかり大きくなった。
「ぱぱー、はーくきてー!」
「きーてー!」
最近子供たちはセラの真似ばっかりする。
ところどころ瓦礫の山はあるにせよ、あの悪夢の連続だった「The last Judgement」も人々の記憶から薄れ、すっかり日常が戻ったようだ。
もちろん俺たちの記憶からも…。
しばし談笑しながらセラの作ってくれたお弁当を食べる。出会ったころから変わらない絶品の味だ。
「…あなた」
「うん?」
「やはりこの世界は美しいですね」
暖かな陽光が差し込んで、風がセラの黒髪を撫でていく。自慢ではないが、こういう時の遠くを眺めているセラの横顔は超絶美人だと思う…。どう聞いても妻自慢だな、これは…。
「この世をあなたと、それに協力してくれた皆さんと一緒に守れたこと、誇りに思います」
「…うん」
「そして私もあなたにも私自身が救われたこと…決して忘れません」
セラの瞳に涙があふれる。
今まで超えてきたいくつもの死線が走馬灯のように脳裏によみがえる。
セラを失いそうになったこと、自分が命を落としそうになったなども一度や二度ではない。
オレは深いため息をした後、意を決して言葉を紡ぐ。
「…でもね、今はセラと子供たちを守るだけのしがない一人の人間さ。買いかぶるなよ」
「…あなた」
「ぱーぱ、まーま、あそぶー」
「そぶー」
子供たちが呼ぶ声にオレたちはハッと我に返る。
「よっし、遊ぶか。行こっ!」
「ぱぱー、あっちでね~ハトさんいた~」
「いた~」
子供二人と元気よく走り出す三人の姿をセナは後ろから見守っていた。
風が心地よく吹き抜ける。
セナが見上げた青空はどこまでも澄んでいた
2024-11-09 05:15:18 +0000