俺の兄貴は生食好きって奴で薄桃色の肉を啜るようにして食べるのが当たり前だ。
俺はその姿を見てうんざりしながら兄貴が用意してくれた食事の肉を焼き直して食卓に戻る、これが俺の当たり前。
少しばかり焼きすぎた肉を食べる俺を見て兄貴は兄弟にあるべき情を浮かべて嬉しそうに笑っている
普段から少し気味の悪い兄貴だけどこの生活もまあ悪くは無い、俺がいてやんないと何しでかすかも分かんないし
そんな優しい笑顔を浮かべていたのはつい最近までで、ここ数日は瞳孔をかっぴらいて俺を凝視するようになっていた
時折見比べるようにチラチラと自分の下の薄桃色の肉を見ている
そんな視線と寿命が近づいた薄暗い電気の光を浴びながら食べる飯はいつもより3割増で固く苦く感じた
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俺が家に帰ると今日も兄貴が先に帰ってきていて俺を待っていた
真新しいエプロンをつけて見慣れた刃の大きな肉切り包丁も食卓の上に置いてあった。
昨日より家の中が明るいことに気づいて
「ただいま、電気変えたんだ」と聞いた
「うん、お祝いだから」と返ってきたのを聞いて長年一緒にいる俺はもう分かってしまった、数日間の不気味な視線と真新しいエプロンとよく磨かれた肉切り包丁
やっぱり俺は兄貴にとって肉の塊でしかないらしい、お祝いするのは兄貴にとっての記念日になるから
馬鹿な兄貴、俺なんて食ったらきっと病気になるのに。俺なんてガリガリで大して食べるところなんて無いくせに。馬鹿な俺、気づいても逃げない、だって玄関の鍵をかけてこの部屋に来てしまったし俺にはもうどうすることもできないんだもん
何事も諦めが肝心 ♪
せめて火は通してくれますように
平行世界ワルフ・ブライト最後の記憶
aaa
2024-11-06 14:37:27 +0000