玄葉の本棚・玄葉と幽魅、秋の読書週間・幽魅、腐っても腐女子

早渚 凪
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私の実妹である早渚玄葉はかなりの読書家です。創作の怪談や洒落怖の朗読・ホラーゲームといったホラー系コンテンツ特化型のバーチャル配信者『染谷紙魚彦(そめやしみひこ)』の中の人をしているので、活字に強くないと務まらないのもありますが、玄葉にはちょっとした特殊能力じみたものがあります。
玄葉は、一度読んだ本を脳内の本棚に収めておく能力があり、一度目を通した書籍の内容はどれだけ経っても忘れないのです。本人が言うには、脳内の本棚から取り出してもう一回読んでるだけだというのですが、まさか全部のページを画像みたいに記憶しているとでもいうのでしょうか。私には分かりませんが、便利な力ですね。
そういう訳で、玄葉がリアルで同じ本を読み終わった後に繰り返し読むという事はまずありません。だから玄葉の部屋の本棚は入れ替わりが激しく、いつまでもある本は『その現物が希少なもの(エラー本含む)』『本そのものにただ読む以外の用途があるもの(仕掛け絵本や立体視の本など)』に限られています。

そんな玄葉の部屋に、今日は幽魅が遊びに来ています。いつもならきゃあきゃあと騒ぎ声がしたり塩をブチ撒ける音がするのですが、今日は静かなものです。何してるんだろう。気になった私はそっと覗いてみる事にしました。
「ちら」
「お兄、何してるの」
速攻でバレました。今日の玄葉は読書中みたいです。となると、幽魅は・・・
「ふんふ~ん」
玄葉のベッドを占領してごろごろしながら何か読んでいました。幽魅に読書のイメージはあまり無かったのでちょっと意外です。
「幽魅が来てるのに静かだからちょっと気になって。幽魅は何を読んでるの?」
「怪人多重面相って推理小説。うるさいから初版本貸したの」
ああ、名前は聞いた事があります。確か、アネモチとかいう名探偵とその助手のコガラシ少年が多重面相という大怪盗と対決するシリーズ物だったと記憶しています。幽魅は好奇心が強い性格だから、ああいう先の展開が気になる小説が肌に合っているのかな。私たちの会話に反応もせずに夢中で読んでいるようです。
「夢中になって読める本があるのはいい事だね。玄葉の方は何を読んでいたの?」
「『もう失敗しない、正しい人類滅亡計画』」
ほっこりしてたのにひどい落差です。私の妹、人類滅ぼそうとしてるの?せめてジャンルが創作小説系である事を願いたい。体験談エッセイ系でない事を祈りたい。とはいえ玄葉に読まれている以上、あの本も近い内に古書店に出ていくのでしょう。

数日後の朝、玄葉の部屋の前をこそこそ移動している幽魅を見つけました。
「幽魅、何こそこそしてるの?」
「ぎゃぴぃ!?」
幽魅が驚いた拍子に、その手からバサッと本が落ちました。前に読んでた推理小説の続編かな?それにしては何か随分薄いけど・・・。
「あっ、凪くん?何か私に用事かな?」
「いや、特には・・・それより本落ちたよ、拾わないの?」
「えっ、ああー、な、凪くんは気にしなくてもいいんだよ?」
・・・露骨に態度が怪しい。私はずんずんと幽魅と距離を詰めて、その足元の薄い本を拾い上げました。
「・・・?『コガラシ少年の受難』?この間の小説の漫画版みたいなやつかな」
「あっ、な、凪くん!そ、そんな事より今日はいい天気だよぉ!?ほら、外に遊びにいった方がいいんじゃないかなぁ!」
誤魔化しが下手過ぎる。私は気にせず本のページをめくって中身を見てみました。
「あああ!」
・・・可愛らしいコガラシ少年が主役の漫画で、師匠のアネモチや宿敵であるはずの多重面相がなぜかコガラシ少年に言い寄ってくる作品でした。アネモチも多重面相も押しの強いイケメンに描かれていて、コガラシ少年との『そういうシーン』もあります。これは、俗にいう成人向け同人誌というやつなのでは・・・。
「・・・趣味に口を出すつもりはないよ。近年特に、性に関する固定観念は薄れつつある訳だし、男同士が間違ってるなんて口が裂けても言わないさ」
「優しい目で見ないでよぉ!?あ、あのねこれは違うんだよ!普段からこういうの読んでるわけじゃ無くって・・・そ、そう玄葉ちゃん!玄葉ちゃんの本だから!」
すごい焦り方です。体温も鼓動も無いはずの幽魅から上気した頬の熱や心音が伝わって来そうなほどに。
「そっか。玄葉の本だったのか。玄葉もこういう同人誌読むんだね、知らなかったよ」
「そ、そーなんだよ。玄葉ちゃんも意外とそういうところあるんだから」
あはは、と笑う幽魅。誤魔化せてると思ってるのかな。
「おい。誰が、何だって?」
幽魅が石のように硬直しました。玄葉の部屋のドアが細く開いて、そこから虫けらを見るような目が幽魅に注がれています。
「あ、玄葉おはよう。これ玄葉の本なんだって?大丈夫だよ、私はこういう趣味に偏見は無いから」
そう言って玄葉に薄い本を差し出します。幽魅が顎が外れるほどの驚愕の表情で私を見ました。
「・・・ほう」
ドアの隙間から本を受け取った玄葉は、表紙に目を落としてからぎろりと幽魅を見た後、バタンとドアを閉めました。その途端、幽魅が金縛りから解放されたようです。
「くっ、玄葉ちゃぁーん!そんなの読んじゃダメ~~~ッ!返してよ~~~!」
大慌てでドアを通り抜けて幽魅が玄葉の部屋に飛び込んでいきました。直後、バサァッと塩が叩きつけられる音が。
「ぎにゃああああー!」
「腐っても腐女子だな」
・・・腐ってるから腐女子と呼ぶのでは?と思いましたが、今話しかけに行けばこちらにも矛先が向くかも知れません。放っておこう。今日もうちは賑やかになりそうです。

※『AIピクターズ』サイト内で生成した作品です。AIピクターズ作品ページ→https://www.aipictors.com/works/492158/

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2024-11-04 15:06:16 +0000