はじめまして、私の名前はサラ。この世界では誰も私のことを知らない。でも、それでいいの。私は、デイジーのようにひっそりと咲き、誰にも気づかれずにその使命を全うする。それが私の役割だから。
今、私の周りにはたくさんのデイジーが咲いている。小さくて白い花弁に黄色の中心。その純粋で可憐な姿は、私が幼い頃からずっと好きだった。でも、ただの花じゃないのよ。デイジーには「希望」や「真実」という意味が込められている。そして、それが今の私にとって何を意味するのか――その答えを知っているのは、私だけ。
この場所は、かつては誰もが幸せに暮らしていた楽園だった。青く澄んだ空、夜には星が瞬き、誰もが安らぎを感じられる場所。でも今は違う。何もかもが変わってしまった。技術が発展しすぎた世界、みんながそれに依存し、自分の存在意義すら見失いかけている。
私は、彼らが探し求めている「真実」を知っている。でも、その真実はあまりにも重い。だから、私は口を閉ざしているの。デイジーの花言葉が示すように、「希望」があるなら、いつかきっと誰かが正しい道を選ぶはずだから。
この白いワンピース、昔は母が縫ってくれたもの。少し古びてしまったけど、まだ私の体にぴったり。母はデイジーが好きだった。デイジーは太陽の光を受けて、どんな逆境にも負けない強さを持っていると言ってた。でも、それはもう昔の話。今は太陽の光すらも、この世界では贅沢になりつつある。
私が頭に被っているのはデイジーの花冠。なんでこんなものを?って思うかもしれないけど、これはただのファッションじゃないの。私の使命を象徴するものなの。私がこの世界を見守り続け、真実を握りしめている存在だという証。
夜空はもう、かつてのように星が輝くことはない。技術の発展で、人工的な光が空を埋め尽くしてしまったから。でも、その暗闇の中でも私は輝くデイジーを見つめる。これが私にとっての「希望」だから。
もし、このまま世界が進んでいけば、人々は完全に真実を見失い、永遠に闇の中をさまようことになる。けれど、私はまだその日が来るとは信じていない。デイジーのように、私たちはまだ光に向かって咲き誇ることができるはずだから。
照明が少しだけ暖かい色合いで、私の顔を照らしている。その柔らかな光が、私の目元に映る。この目で見たもの、これまでに知ったこと、すべてが詰まっている。でも、誰にもそれを話すつもりはない。少なくとも、今は。
私の目は茶色がかっていて、少し黄昏れたような色をしているって、よく言われる。母譲りの目なんだ。昔、母は「この目でいつか世界を救うのよ」と言ってくれたことがあった。その意味は、今になって少しだけ理解できる気がする。
でも、結末はまだ見えてこない。私は、まだこのまま歩み続けるしかない。デイジーが太陽に向かって咲くように、私もまた、その日が来るまで――希望のために。
今、空は深い青に染まっている。夜が近い。でも、どこかでまだ小さな光が輝いているような気がする。それが私たちの未来の「真実」だと信じて、私は今日もデイジーの花冠を頭にのせて、静かに待ち続ける。
2024-10-25 12:31:35 +0000