カーレの街に入ったとたん、不審者とみなされ石牢に放り込まれた熊野であったが翌朝には同室だった老人と共に解放された。
老人は驚くほど健脚で、あっという間に熊野を置いて去り、前の分かれ道を右に曲がっていった。
ほどなく老人が曲がった十字路にたどり着くと老人が右の曲がり角の先で左側の小屋にはいろうとしていた。
真ん中の道はカーレの街の中心部へつながっており、左側の曲がり角の先の道ではみすぼらしい子供たちの一団が何やら大きな荷物を背負って歩いていた。
「さて、どうしたものかしら…ですわね」
しばらく思案したのち、左に曲がり、子供たちの後をついて道なりに進んでいると通りは粗末な小屋が並んでいて警戒をしながらその前を歩いていく。窓からは奇妙な顔がのぞき、じっと熊野を監視している視線を感じる。
「…なんかじろじろ見られて恥ずかしいですわね…っ!?」
熊野は改めて自分が今ビキニアーマー姿であることを思い出し、恥ずかしくなり始めた。
そうしていると行く手の曲がり角から衛兵の一団が現れてこちらに向かって歩いてくる。とっさに近くの小屋に入り込み扉を閉めると、小屋の前を衛兵の一団が歩いていく足音が聞こえた
「…ふぅ…また牢屋なんかに入れられたらたまったもんじゃありませんわ」
安堵したのもつかの間、暗がりに目が慣れてくると、うらぶれた小屋の中に三つの顔が自分に視線を向けており、小屋の中に甘ったるい水たばこのにおいが充満していた。自分を見つめている三つの顔をよく見るとブラックエルフたちが水たばこを吸っていたのだった。三人とも、どこかうつろな目をしてぼーっと虚空を見つめるような目で熊野を見つめている。
「あ、あら、失礼。それでは、ごきげんよう」
気まずくなった熊野が小屋を出ようとすると一人のブラックエルフ彼女を呼び止める。
「あー…ねーちゃん…せっかくきたんだから水たばこ一緒にどう?」
ブラックエルフの一人が視点の定まらないうつろな目で吸っていた水たばこのパイプを熊野に差し出す。
(…って、それって間接キスじゃない…!それに私タバコは吸いませんし…なにより目つきがヤベーですわ!)
「あ、いいえ…わたくし、急いでますので失礼いたしますわ!ごめんあそばせ!」
なんかヤベー集団に遭遇してしまったと思いつつもあわてて小屋から飛び出るのであった。
2024-10-20 02:07:00 +0000