遠くに位置する星々が瞬く
私たちの身体を包む夜闇が、その星々の煌めきをさらに増長させていた
「……こう考えるとさ。ちっぽけだね、私たちって」
真理を求める彼女にしてはらしくないセリフだ
Vanitas vanitatum……
エデン条約の時、耳にタコが出来るほど耳にしたその祝詞が脳裏を過ぎる
彼女の求める真理とは、あの星々に比べてどれほどの価値があるのだろう
「ねぇ、先生」
彼女は手袋をポケットにしまった
冬の寒空に晒した素手が、私の頬に触れた
「あれに比べたら、私たちの距離なんて無に等しいのかもしれないけどさ」
彼女が少しばかり距離を詰めてきた
手が触れている私の顔に、熱が帯びてくる
「私には……この距離が、無限のように感じる」
冬の風が私たちの熱を奪っていく
「ねぇ、先生」
なのに、身体から発される熱の方が強い
寒風が私たちの身体を撫でても、まるで意味をなさない
「この距離がゼロになったとき、矮小な私たちはどうなっちゃうのかな?」
星空の下、二人の熱が重なる
空に浮かぶ星々が強く、強く輝いた
2024-10-14 12:18:01 +0000