心の重さを知ル時二【illust/117465106】
承認済
「こっちへおいで」
「おやおや」
「あぁよくない。よくありませんね。お前が苦しめられているのはどうにも耐えがたいようです、私。アレ、沼に沈めてしまいますか。凍らせることも出来ますが」
-------------------------
■クラニエ
・年齢:77歳 身長:177cm(人型)、3m(魚) 性別:♀
・所属:暴風大陸
・一人称:「私」
・二人称:「お前」
魔女、使い魔どちらの自我も残っていない新しい命。
そこそこ強い魔力を持っているが基本的に浮くことにしか使っておらず、宝の持ち腐れ。
ただぼんやり漂うだけの日々を過ごしており、美しい景色を求めて他大陸へ出向く事もあるがそれもごく稀。
-------------------------
■素敵なご縁をいただきました
オクルスさん【illust/122292089】(森林大陸)
「何です、お前。狂った魔物かと思いました。紛らわしい」
「おや、非を認める頭はありましたか。熱烈歓迎の度に説き勧めているのならご苦労なことです」
「お前に使ってやる時間などありませんが」
「ふふ、鬱陶しい」
「お前の名前など忘れました。王と呼ぶので十分でしょう」
「花がらや腐肉を再生させたりお前の翼を凍らせてしまうくらいは容易いですが。あぁそれとも燃やしましょうか……ふふ、残念」
「冗談はさておき。確かにここでは随分珍しいものなのでしょうね。仕方ない、簡単な魔法くらいなら見せてあげます」
「魔力の器となる為に生まれた生命の紛い物、とでもいうのでしょうか。入れ物が脆くてはいけませんから多少は丈夫に造られていたはずです。あぁほら、皮膚が裂けない」
「お前は毅然としているのが良い。些細に騒ぐ羽虫には目も当てられませんが、お前はちょうど良い」
「お前の視線は私の顔や心の臓に大穴をあけるようで、まるで獲物の気分です。王、簡単な狩りは嫌いですか。彷徨う事に飽きました」
「オクルス。もっと近くにおいで」
「ふふ、へぇ?お前存外……ふふふ」
「私もか」
☽
「あぁお前、そう。潔く散りましたか」
「惜しいですね。もうお前の羽が新しくなる事も、私の手を取る事も、射抜くような目で私を焦がす事もありませんか」
「覚悟はとうに出来ていました。私はお前の妻なのだから」
「けれど私の王」
「心だけ道連れにするとは」
☽
「大鷲の時代が終わったこの地に、この世に留まる理由はありません。あれが居なくとも生きてはいけますが、所詮は造り物。無へ帰る時がきただけのこと」
「少しばかり気分が良いのです、漸く私だけのオクルスとなった」
「オクルス。私が生まれた意味、そして終わる意味をお前に」
☾
☽
☾
「見詰められるのは好きではありません。観察されているようで」
「けれどお前の瞳の中にはいつまでも居ても良い、と……ははっ、ふふ……似合わぬことを」
「…………愛しているのだと、感情を有する生き物はこう言うのでしょう?」
「同じ言葉は返さなくていい。先の言葉も忘れなさい。ただ永く、私の傍に居ればよろしい」
-------------------------
血の一滴余さず混ぜ合わさなければならない。
余計な感情を持ってはならない。
痛みに声をあげてはならない。
魔力の器として正常に機能しなければならない。
器でも魔女でもなく、ただのヒトとなり果ててしまわぬよう、何者にも心を暴かれてはならない。
いつか、完成された素晴らしい生命となるために。
─被験体☽ ☾ ☽ 冥贄─
[研究施設跡地にて]
-------------------------
2024-10-02 18:43:58 +0000