ある有名なクラブに招待された先生はその絢爛豪華なパーティーを前にその雰囲気に圧倒され息をのんでいた。
差出人不明ではありながらも生徒と名乗る人物からの救援メッセージ。先生を名乗る大人なだけはある…生徒たちの模範であろうとしているのか…それともこういう事はどうしても見過ごせない性分なのか。見定めるにはまだ時間が欲しい。名も知らぬ生徒が、このパーティーのどこかにいること以外、相手がどのように困っているのかもわからないまま彼は単身でそのクラブにやってきた。この学園都市の夜の顔。其のうちの一つとして有名なこの店は沢山の客と従業員で賑わっている。キラキラとおしゃれな装いを着こなす者もいれば、商人を名乗る胡散臭い者、路地裏が似合いそうな人相の悪い者、息を吹きかけられただけで吹っ飛びそうなほど圧のあるボディーガードなど様々だ。そんな喧騒の中、今夜の大きなイベントが始まろうとしている。このパーティ会場を貸し切った金持ちそうな人物が参加者のみなに感謝のスピーチを述べてから始まるらしい。そういえば、そんな目玉イベントが告知されていたななどと、さっきまで不慣れでばつの悪そうな顔をしていたことは忘れ、事前に調査した内容を思い出したであろう顔をした彼は、イベントでポールダンスを踊ってくれるバニースーツを着た女の子たちが登場すると、飲んでいたノンアルコールのお酒を一気に噴き出した。どうやら知り合いがポールダンスに参加しているらしい。前にいた観客の頭部にそれがかかり少し騒ぎになっていると、それに気づいたのか青いバニースーツの子が彼に向ってピースのポーズをとっている。
「ちょっ…バッカお前、あれ程変なことするなって言ったろ!?」
と小声ながらも顔を真っ赤にしながらすぐ辞めさせる赤いバニースーツ。先生は驚きつつも周囲にはバレないように、返事かどうか
わからない形にはなったが顔を伏せ片手で抑えながらも利き手で軽くひらひらと手を振る。彼女たちには伝わったようだ。満足そうに青いバニースーツの子はイベント通りの行動に戻ってゆく。赤のバニースーツの子も恥ずかしながらも続く。
先生の知り合いでバニースーツということは…ああ、ミレニアムの…これは面白いことになっていきそうですね。どうやら彼女たちにも目的があってここにやってきたらしい。先生を呼ぶためわざわざあの子をだしにした甲斐がありますね。
見えない場所での勢力争いに巻き込まれるのはあの子にとっては救いのない悲劇としか言いようがありませんが…あの主催者は逃してはくれないでしょうね。決まった結末とも言えますし…それとも彼はあの子を助ける英雄にでもなるのでしょうか…
傍観する彼女はケラケラと笑いながらも、目は笑っていなかった。
煌びやかな場所に渦巻く思惑や闇が彼を覗くとき彼は何を思うのだろうか…
2024-09-29 13:42:31 +0000