「ちょっと!!ここから出しなさい!!私、何も悪いことはしてませんわよ!!」
石牢から熊野の怒声が響き渡る。カーレの街に首尾よく入れたものの、それを衛兵に見られて取り押さえられて石牢に放り込まれたのだった。まあ、合鍵で無断侵入したのだから当然だが。
「…元気のよい娘さんじゃな」
その声に振り向くと先客の老人だった。老人の左袖はふわりと垂れており、左腕がないことがわかる。
「お前さん、なんでこんなひどい場所に連れてこられたんじゃ?」
熊野はカーレの街を抜けようとしていることを話すと老人は頷いた。
「なるほど、それならお前さんは魔術師か…ワシも昔はそうじゃったんじゃよ、シャンカー鉱山のオーガーのせいでこうなる前まではな」
そういいつつ老人が自分の左腕を見る。
「この街の北門から出たいなら当然呪文は知っておるのじゃろ?」
熊野が少々困惑した表情を浮かべると、老人はため息をついた。
「どうやら、説明したほうがよさそうじゃな…」
老人の説明では北側の門はカーレの北側のバクランドからの侵略者から守るために魔法で鍵がかけられている。魔法の鍵は決められた呪文が唱えられた時だけ開き、その呪文はカーレの権力者だけが知っており、四節からなる呪文を全て知っているのはカーレの最高権力者だけだが、一行ずつをカーレの指導者である四人の市民が知っている。これによってそれぞれの独断で門が開かれることを防がれ、カーレの安全が守られているという。
「ところで、その権力者さんはどこにいらっしゃるのかしら?」
「ふむ…それについてはわしもよく知らんでな、街の指導者の一人が魔術師だということだけは知っておる…なんにせよ、お前さんが街の脅威とみなされなけば明日の朝には釈放されるじゃろうて」
そうしているうちに夜になり、衛兵も戻ってこないため熊野はバッグから食料を取り出して貴重な情報を与えてくれた老人と分けて食事をとる(食料:2消費)。
真夜中になり、さすがに眠くなってきた熊野。老人はベンチの上ですやすや寝息を立てている。
「ふわぁ…寝たいところですけれど、さすがにお年寄りといえ殿方と同室ではさすがに寝れませんわ…」
そうして一睡もできないまま、目の下にクマを作って徹夜しまう熊野。
夜明け過ぎに衛兵が戻ってくると、街の脅威ではないとみなされた熊野たちは釈放されたのであった。
2024-09-29 10:56:51 +0000