ある夏の日、少年ケンと少女ユナは、村はずれの大きな沙羅双樹の下に座っていた。此の場所は二人のお気に入りの場所で、静かな森の中にひっそりと佇んでいた。
ケンは目を閉じて、柔らかな風が頬を撫でる感覚を楽しんでいた。一方、ユナは大きな木の幹にもたれ、空を見上げると、葉の間からこぼれる光がキラキラと輝いているのを見つめていた。
「この木の下にいると…不思議と心が落ち着くね」とユナが囁くように言った。
ケンは微笑んで、「此処は特別な場所だよね…まるで自然が僕たちを抱きしめてくれるみたいだ…」と答えた。
古い言い伝えによれば、此の沙羅双樹は、見る者の心を癒し、優しい夢を見せてくれる不思議な力を持っていると言われていた。二人はそんな伝説を信じて、此処で過ごす時間を大切にしていた。
すると急に、涼しい風が吹き、木の葉がさわさわと音を立てた。二人は黙って其の音に耳を傾け、自然の静けさに包まれる瞬間を楽しんだ。
時が経つのを忘れるほどの穏やかな時間が過ぎたあと、ケンはゆっくりと口を開いた。「ユナ、いつかまた…別の道を歩む日が来ても、この木の下で過ごした時間を忘れないでいようね…」
ユナは静かに頷き、ケンの手をそっと握った。二人は互いに微笑み、これからの未来に想いを馳せた。
沙羅双樹の下で過ごした…此の特別なひとときは、二人の心に深い癒しを与え、これからのどんな時も…彼らを強く支え続けてゆくのであった。
井上軟太郎
2024-09-07 12:54:26 +0000