…血が不味い。そう思うようになったのは物心ついてすぐだ。あの町には薄暗い路地が多く、人が倒れていても誰も気にしないため狩り自体は楽なものだった。だが、ろくなものを食べていない貧民はその血も不味い。飢えを満たすために食事は必須ではあるが、不潔な人間を組みしいてその悪臭を嗅ぎながら牙を突き立てるのは毎回憂鬱な気分になる作業だ。だから私はこの町を出る。より美味い血を求めて。どうせ生きるために必須なのだから、楽しんだ方がよいではないか。
2024-09-06 15:30:21 +0000