「『ベニハシガラス』、颯爽と参上です!
む?キバシガラスとそっくりですって?
聞き捨てなりませんね!全然違いますよ!
海辺から高山まで制覇し、都会での文明ライフも愛するのがこのベニハシガラス!
高山と山小屋ぐらいにしか現れない山籠もり変人がキバシガラスですよ!覚えておいてください!」
イギリス諸島から中国東部までの幅広い地域に生息しているカラスの仲間『ベニハシガラス』のオリフレです。
ベニハシガラスはキバシガラスと共にベニハシガラス属を構成しているカラスで、キバシガラスと同様にアルプス山脈やヒマラヤ山脈の様な高山地帯(エベレスト山の7950m地点で営巣ペアが確認されている)に生息しているほか、海岸部の崖や寺院や教会、廃墟になった人家などにも積極的に巣を作ります。
キバシガラスとの外見的な差異の一つは名前の通りの赤い嘴で地面に隠れている虫やミミズ、キバナノアマナの球根を掘り返し捕食する事から他のカラスに比べてカーブが強い形状をしています。
世界的には個体数が多い事から絶滅の危機にはないとされていますが、餌場に適している開けた草地や住処に出来る自然地形の開発や害鳥として駆除されてきた背景からヨーロッパ圏では姿を消した地域も少なくなく、イギリスの南西の半島であるコーンウォールもその一つでした。
イングランドの一角でありながらケルトの流れを色濃く残した独特の文化や言語をもつコーンウォールは「ブリタニア列王史」においてアーサー王が裏切りを働いたモードレッドとの決戦に臨んだとされている土地であり、コーンウォールの人々の間では「モードレッドとの戦いで瀕死の重傷を負ったアーサー王の魂がベニハシガラスに乗り移り、その証として嘴と足がその戦いの中で流された血の赤に染まっている」という伝説が語られており、ベニハシガラスを殺す事はタブーとされ、コーンウォールの紋章にも描かれる程愛されてきましたが、ヘンリー8世が1532年に制定した害虫法によるカラス駆除の推進や諸々の環境破壊の影響により、英国のベニハシガラスはウェールズやマン島といった西部地域に追いやられコーンウォールからは永らく姿を消す事になります。
しかし2001年に小規模のベニハシガラスの群れが現れると翌年には巣を作りそのまま定着し、現在に至るまで少しずつ個体群を回復させており、コーンウォールは念願の「王の帰還」を果たす事になりました。
2024-08-31 14:45:55 +0000