【ソバスピ】迎撃、伏砂龍王【フォート・ファング】

堕魅闇666世

アルルレーゼillust/121823250
の自己紹介的エピソードです。
他の物語との時系列の関係は特に想定しておりません。
不都合等ございましたらスルーとしていただければ幸いです。

危険な目に遭わせてすみません
アセロくん&博士illust/121338549

お手合わせ願います
伏砂龍王さまillust/121345827

整備よろしくです
ナナ・ナノハナさんillust/121586520



「・・・博士、アレって」
岩山の上から、セキガハラを目指すフォート・ファングの
車列を睥睨するそのシルエットは・・・見間違うはずもない。

アセロが指差すその赤黒の巨体はタイラントドレイク、
またの名を『普天真君伏砂龍王』。
「ちょいとうまくないねぇ。あのアリクイ頭は
人間のクルマが大好物なんだよ。
オーダーメイドの一点ものとか、珍しいヤツは特にね」

「それって、モロにボクたちがヤバくないですか??」
新しく仕立てたばかりのモヒカンバギーに竜からの
熱い視線が注がれているような気がしていたが、
残念ながら思い違いではないらしい。

「仕方ないねぇ。飛ばしな、アセロ。
少しでも他の車両から距離を取るんだ」
伏砂龍王が崖から飛び立つと同時に、アセロと博士を
載せたモヒカンバギーも車列を離れて全速力で走り出す。
背後から迫る気配を横目に振り返りつつ、
博士は無線機に手を伸ばす。
「此処は・・・『燕返し』の出番だよ」

───

「おっとぉ!レーゼちゃん、出番だよ!!」
ホットラインは即座に、フォート・ファング本拠地上層に繋がった。
「標的はタイラントドレイク、アセロくんと博士が惹きつけてる!
2人が無事なうちにこっちでバトンを引き継ぐよ!」
博士からの救援要請を受け取ったナナ・ナノハナが
隣で黙々と配線を組む人形機兵に声をかける。

「・・・竜種の出現事案と判断。出撃する」
その隻眼の奥に強い意志の光が瞬いたのを認めて、
ナナは力強く頷く。
「うん、装備はバッチリ整備してるよ!行っといで!!
・・・絶対に、無事で帰っておいで」
「・・・最善を尽くす」
短く答えた機兵が、開け放たれたガレージの一角に設られた
カタパルトに両足を接続する。
周囲から伸びるメンテナンスアームがエンジンユニットを、
マントを、ヘッドセットを次々に躯体へ装着し、
竜餐機兵『アルルレーゼ』を屠龍の騎士へと仕立て上げる。

滑走路に沿って点灯する白熱灯が、空の果てへと戦士を誘う。
「ドライグリッター『アルルレーゼ』、
これより対竜邀撃任務に出撃する」
最後に、螺旋を描く竜角の大槍『ランゲリボルグ』を
手に執ったアルルレーゼが、決然と激戦の待つ空を睨む。

カタパルトを紫電が走り、暴力的な加速度を与えられた
アルルレーゼがフォート・ファングから射出される。
開いた翼に風を孕み、背の推進器を全開に吹かせた
その後ろ姿は、瞬く間に空の果てに消えていった。
「・・・思いっきりやりな。いくらでも、直してあげるから」
竜に挑む機兵の戦いを知るナナは、
その無事を祈らずにはいられなかった。

───

「いいですね、いいですね。面白い車です。
小さいけどその分キビキビ走って見ていて楽しいですね」
必死に逃げるアセロと博士のモヒカンバギーを
追う伏砂龍王は、時々弄ぶように爪を振るい、
左右に交わす相手の反応を楽しんでいたが。

「さて、性能はだいたい分かりましたから。
・・・そろそろもらいますね」
それまでとは違う、確実にバギーを捉える軌道で
伸びたその爪を、矢のように飛び過ぎた影が打ち払う。

「アルルレーゼ、現着。陽動任務開始」
大きく弧を描いて天に舞う機兵の背に竜の視線が吸い寄せられた
その隙に、アセロは手近の岩場に逃げ込んで追撃を免れる。
「アレが、竜餐機兵・・・竜を倒すために作られたっていう」
岩場の影から見上げた空に、竜と機兵の刻む航跡が幾重にも交わる。

「まぁそんなもん、所詮夢物語だったんだけどねぇ。
結局、一体の竜も倒せないまま騎士団は壊滅。
残った子達も、今はどこに流れ着いたものやら」
手際よく車体の状態を確認した博士が、
小さくため息を吐いてアセロと共に空を見上げる。
「・・・それでも、あの子はまだ生きている。
フォート・ファングを竜の脅威から遠ざけるデコイとして、
最前線で戦い続けながらね」

両腕からカーボンブレードを伸ばしたタイラントドレイクが、
繰り返しアルルレーゼに襲いかかるが、未だその刃は届いていない。
「どうした、竜よ!確と見ろ、私は此処だ!
絶対者の力に溺れて研鑽を忘れた者など、所詮こんなものか!!」
襲いかかる竜の斬撃を縦横無尽の空戦機動でかわすアルルレーゼが
竜に向かって嘲弄を放つ。

「生意気なゴミですね・・・」
業を煮やした伏砂龍王が放つブレスは広域を焼き払いながら
地表に降下したアルルレーゼを執拗に追う。
その暴威がついに華奢な躯体を捉えるかに見えたその時・・・
アルルレーゼの軌道が跳ねる。

軽量の機体と推進器の可動機構を駆使した鋭角のベクトル転換機動
───通称『燕返し(カットバック・スワロゥ)』は、
その刹那、竜の運動性を凌駕した。
瞬く間に頭上をとったアルルレーゼが繰り出す渾身の刺突が
ついに竜の首筋を捉えたが・・・

アルルレーゼは、誰よりもよく知っている。
・・・私達では、竜には勝てない。

厚い鱗に阻まれて、限界を迎えた右腕が捥げる。
宙に舞ったランゲリボルグは、姉たちから受け継いだ形見だ。
弾き飛ばされながらも伸ばした腕は確かに槍を掴んだが、
同時に龍王にとっては格好の標的だった。
「少し痛かった。・・・非常に不愉快です」
薙ぎ払われた尾はその身を捉えて、地上へと叩き落とす。

「ああっ!やられちゃった・・・!?」
「いや。あの子はそう簡単にはくたばらないよ。
・・・ご覧。綺麗に堕ちるだろう」
狼狽えるアセロを宥めて、博士は
軌道を修正し、地表へと不時着する航跡を指し示す。

「・・・うん、竜は帰っちゃいましたね。博士、行きましょう。
お世話になったし、せめて回収してあげなくちゃ」
早速エンジンを再始動するアセロに、博士も頷きを返す。
「ああ。・・・あの子には、まだまだ
飛んでもらわなけりゃならないからね」

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2024-08-25 15:55:55 +0000