なんでキルヒアイスにそういうこと言わせるの? やめてよ……と思ったけど、これラインハルトさまが自分で自分に向かって言ってるんだ……って気づいたらやっぱり胸が痛い。これまでのキルヒアイスは本当に「ラインハルトさまの内面の、キルヒアイスならこうするだろうな、という言動の反映」だったけど、繰り返す病臥で心身消耗したゆえか、キルヒアイスらしさが薄れていって、ラインハルトさまの、自身を客観視する深層心理の声というか、原作並みに手厳しい自己糾弾に傾斜してきてる気がする。キルヒアイスが言うはずもないことを言わせて……。
ヒキのコマ、ラインハルトさまの首を締めようとするかのようなキルヒアイスの顔は眼窩のくぼみに影が落ちて、私は死の象徴としての髑髏を想起しました。これはあるいは、ラインハルトさまも避けがたい死病を感じ取っているのかも知れない。これまでは疲労のせいとばかり言われてきた発熱が、今回初めて病気であると描写されました。しかもこのような疑似歴史ものでそうやって言われると、明らかに後世からの視点=病によって既に崩御した陛下、を意識させられるんですよね。ラインハルトさま自身、この時点ではまだ自分の病気のことなんて知る由もないけど、理性でなく肉体の方が死の予感を覚えているのかも。一方では我が子の誕生が示唆されているというのに〜‼
幸福と平穏の中で笑って長生きするラインハルトさまを見たくない訳がないけど、ラインハルトさま自身がそんな人生を求めてないし、そもそも戦いの中でしか生きられないように造形されているのが、この主人公の哀しさであり輝きである。つらいな。別に平和を求めてここまでやってきたんじゃないもんね。戦って勝ちたい、それだけで気づいたら周りをみんななぎ倒してただけだもんね。原作外伝で、戦いに出られない赤金が暇を持て余しつつイチャイチャじゃれてるのを見るのなんか大好きだけど、「彼らの若い精神は人生に休息など求めていなかった」みたいな描写にピシャリとされてシュンてするんだよな。
本筋のロイエンタール叛逆については、お互い猜疑も叛意もなかっただけに「待て待てお前ら、なんでそうなった、よく話し合え!」って気持ちが未だにあるけど、これが物理的な距離の恐ろしさかとも思う。さらにその間に色んな立場や思惑の奴らが挟まってきて、それぞれ状況を引っかき回していくんだもんな。そして気づいたらもう話し合える段階を失しているという……。
本誌の麗しい裏表紙のおかげで、同時発売の最新30巻も忘れず購入できました。いよいよ大台!
2024-08-23 06:20:00 +0000