その街には怪人がいる。
夜、部屋の中に音もなく忍び込み、無防備に眠っているかわいい女の子に目隠しをしてしまう、目的も正体も一切が不明な謎の怪人――その名も誰が呼んだか〈目隠しジャック〉。
ジャックの目隠しには時限式の施錠がされており、一定の時間が過ぎるまでは開錠ができず取り外すことができない。また、目隠し自体が魔術で強化されているため錠やベルト部分を切断するなどして強引に外すことも不可能となっている。
寝る前にあらかじめ鍵付きの目隠しを自ら装着して施錠までしてしまうことでジャックの被害を防止できると言われている。
しかし、街の中にはジャックの存在を軽視して、あるいはうっかり予防策をとらずに眠ってしまいジャックの目隠しを装着されてしまった女の子たちが少なからずいる。
目隠しをされてしまいなにも見えなくなってしまった女の子たちも生活のために仕事を続けなければならない。
ほとんどの女の子は目隠しで視界を暗黒に閉ざされたことの緊張と不安で表情をこわばらせているが、笑みを浮かべる余裕のある子も一部に存在する。
目隠し生活が長期化して慣れたせいか、あるいは、目隠しによる視界喪失など苦にならずむしろ楽しんでいる――そんな稀有な感性を持った女の子もいるのだろうか?
1~5枚目
街の店舗で働く目隠し少女。この街では〈目隠しジャック〉対策のための鍵付き目隠しを販売している店も多い。にもかかわらず、自店で販売している商品が彼女を救えなかったのはなんとも皮肉である。
『目隠しを日常的に装着したままでいられる理由がほしくてわざとジャックの目隠しの餌食になった娘もいる』などという噂が一部で囁かれているが、さすがにそれは妄想が過ぎるであろう。
6~9枚目
宿屋のカウンターで受付をする目隠し少女。冒険者や旅人など街の外からやってきた者の大半は〈目隠しジャック〉の存在を一笑に付して信じようとはしない。しかし、目隠しをしたままで仕事をする少女の姿を見て考えを改める者も多いようだ。
この街の宿屋はそのほぼすべてが鍵付き目隠しの貸し出しサービス(有料)を行っているが、受付に目隠し少女を置いている宿屋では目隠しの貸出率が高い傾向にあるという。
10~14枚目
宿屋内の食堂で働く目隠し少女。慣れ親しんだ場所であるためか、目隠しをしたままでもどうにか動けるようではあるようだ。
なにも見えていない状態でけなげに食事を運ぶ姿が人気を呼び、客数は増加傾向にある。
15~20枚目
朝日の差し込む部屋で鍵を探す目隠し少女。〈目隠しジャック〉対策として自ら鍵付き目隠しを装着して就寝したまではよいものの、目覚めた後で鍵の置き場所を失念する、鍵を紛失する――などの理由で目隠しを外せなくなる事案がこの街では毎朝どこかで発生している。
また、こっそりと部屋に忍び込んで鍵を隠す、大量の偽の鍵をバラまいていくなどのイタズラも流行しつつあるようだ。
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関連イラスト⇒illust/113662541
2024-08-23 01:49:26 +0000