僕がまだ小さかった頃
時計の見方を教えてもらった。
長い針と短い針がずっとかけっこをするのだと教えられた。
短い針が1日かけて2周する間、長い針は24周もするのだ。
時計の針はなんて大変なのだろう。
僕は短い針の方がいいなと思った。走るのは速くなかったから。
でも、すぐ横を長い針に何回も追い抜かされるのは一体どんな気持ちなのだろう。
そんな、答えの出ないことをずっと考えていた。
大人となった今も、壊れて止まった時計を見るとどこかホッとする。
「もう走らなくていいんだよ」
「もう追い抜いたり、追い抜かされたりしないんだよ」と
動かない針にそう囁く、あの頃の僕がいる。
(小さい頃にあわれんだ無生物たちの話)
2024-08-20 14:48:43 +0000