ドリームジャーニーがフォーマルなドレス姿で現れる。
今日は彼女がGIレースに勝利したことを祝い、盛大なパーティが開かれている。
「ジャーニー、本当におめでとう」
「ありがとうございます」
その後、記者や関係者たちに囲まれ色々質問されたり会話をしていた。
一通り済んだのか彼女はまたこちらに来る。
その手は花束やプレゼントなどで塞がっていた。
自分は思わず手に持っていた花束を後ろ手に隠す。
「……トレーナーさん?どうかなさいましたか?」
いつもより目元に朱の入ったメイクをしている彼女は頭を傾げながらこちらを見る。
「あーいやその……」
今、花束を渡しても邪魔になるだけだよなぁと思ってどうしたものかと考えていると、彼女の横にスッと一人の男性が現れる。
会場のスタッフであろう綺麗なスーツ姿の男性が彼女の持っていた花束やプレゼントなどを受け取り去っていく。
「ああ、すみません。お話の途中に。それで、どうかされましたか?」
彼女は静かに微笑みながら手のひらをこちらに向け話を促してくる。
「じゃあこれ。本当におめでとうジャーニー」
自分は後ろ手に隠していた花束を彼女に渡す。
彼女はそれを両手で受け取る。
「ありがとうございます。本当に嬉しいです」
ニッコリと笑う姿にホッとすると同時に言葉が漏れる。
「さっきたくさん花束貰っていたから渡すの躊躇しちゃった」
手も塞がっていたし、自分の花束なんかよりも豪華なものだったためなんだか恥ずかしくなって隠してしまっていた。
「そんなに卑下なさらないで。私は貴方から頂けるプレゼントであれば心から感謝し受け取れますよ」
とても嬉しい言葉をもらい感動していると、彼女は花束から一本のバラを抜き取っていた。
「バラ……。良い花ですよね。見栄えも香りもよい」
そう言ってバラに鼻を近づけ嗅いでいる。
「トレーナーさんはもし、バラの花束をもらうとしたら何本だと嬉しいですか?」
「えっ?バラの花束で?」
彼女から突然そんな質問が飛んできた。
「はい。バラの花束は色や本数で意味合いが変わってきますからね」
よくプロポーズなどで100本のバラの花束を渡すなどは聞くがそれ以外は良く分かっていない。
「うーん実はあまり詳しくなくて。君だったら何本のバラの花束だったら嬉しいの?」
あまり想像も出来なかったので質問に質問で返す形になってしまった。
そんな彼女は目を細めながらこちらを見つめる。
「……そうですね、私としては――」
彼女はこちらへと近づいてくる。
「一本で十分に嬉しいですね」
そう言って手に持っていたバラをこちらのスーツのフラワーホールに差す。
彼女が近づいたことにより甘いスモーキーな香りで包まれる。
「先ほどもお伝えしたでしょう?」
それは周りの喧騒にかき消されるほどのささやき声だった。
「貴方からのプレゼントならなんでも嬉しいと」
2024-08-18 10:00:05 +0000