光と闇の園芸師

うーら
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繊細なガラス細工の如き花弁を持つ水晶華はその王国を治める王家の秘蔵の品でもある。

水晶華の栽培は王家直属の宮廷園芸師の家系にのみ許されている。
生育の過程で適切な処置を施された水晶華はその美しさを半永久的に保つとされ、忠義に厚い家臣達に王家より褒美の品として下賜される。

しかし水晶華は本来、危険な花でもある。
透き通る花弁は光を当てるとあまりにも強く煌めき、それは人の目を傷つけるほどである。
園芸師は代々伝わる秘伝の技術を以って水晶華を芽吹きの時より[調整]し、人の目を傷つけることなく最大限の美しさを発揮できるよう育てあげる。

けれどそれは、並大抵のことではない。
生育途中の水晶華の強すぎる煌めきから自身の目を保護するために、園芸師は目隠しを着用しなければならないからだ。
目隠しは厚く、顔に一分の隙なく密着して一切の光を遮断する。
漆黒の闇に閉ざされた世界で、水晶華の発するわずかな音と、匂いと、指先に感じる感覚だけを頼りに園芸師は作業を進めることになる。

水晶華の世話をするのは男性よりもより繊細な女性の方が向いているとされている。
そのため、宮廷園芸師の家系に生まれた女子は5歳の誕生日を迎えると母の手で目隠しを施され、以後は常に目隠しをして生活し聴覚や嗅覚、指先の感覚などを研ぎ澄ませていく。
そして、年齢が10になるとまずは見習いとして水晶華の生育に携わり、先達から秘伝の技術を学んでいく。

その日の仕事を終え、水晶華の育成室を後にしても彼女達が目隠しを外すことはほとんどない。
視覚に頼れば、聴覚や嗅覚や触覚はすぐに鈍ってしまうからだ。
視覚以外の感覚を高度に維持するために、いつか後進に道を譲って引退するその時まで、彼女達は目隠しをして自らの瞳を封じ続ける。

水晶華という光を生み出すために、自らを闇の世界に置き続けるのだ。
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関連イラスト⇒illust/121102621

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2024-07-26 03:38:36 +0000