【ポケサガ】予兆【救国の聖戦】

蓮華*企画

足元が覚束無い。ボタボタと額から零れるものを無視して、背負った幼馴染のことだけ考えながらひたすらに歩いて、どのくらい経ったか。
教団が隠蔽し続けたあの忌々しい地下迷宮が崩落し、カイたちは否応なくそれに巻き込まれた。どれだけ気を失っていたのかは分からなかったが、近くに溜まっていた赤黒い液体の量が決して甘優しい現実ではないと告げていた。
咄嗟に庇ったニケ──カペラはあれから一度も目覚めない。時折胸元のひび割れた赤晶石を抑え込みながら呻くばかりで、何度呼びかけても反応しなかった。

(助けられた……訳じゃない。まだだ)

何とか地上に戻ってきたら、今度は大地が丸ごと抉り取られていた。最早何処に行けば良いのかも不明瞭だ。
せめて誰かに会えれば。
そう柄にもなく願っていると、カイの目に見覚えのある姿が映った。片腕の雰囲気が違うようだが隣にはあの小さいのもいる。間違いようがなかった。

「ハゼ」

どうにか近くまで来て、少し大きめの声で名を呼ぶ。普段にしてみれば小さめだったはずだが、それでも彼──ハゼはばっと振り返って、すぐさま駆け寄ってきた。

「カイ!?どうしたんだその傷!」
「野暮用。そっちこそ何してんだ」
「ギルの話聞いてないのか?」

戸惑った声色を出しつつもハゼは現状を教えてくれた。生きるもの全て喰らい尽くす異界の化け物が現れたこと、追随するようにまた二種の怪物が現れたこと。ハゼの足元で不安そうにしつつも話を肯定するクコナの様子からも、それが真実なのだと分からせてきた。

「……随分してやられてるみてぇだな」
「お前もだろ。その怪我でこれ以上動くな。そっちの女もだ」
「言ってろ。まだ終わっちゃいねぇんだよ」

そう言った矢先、グッと力んだ足に鈍い痛みが走る。実に情けない話だった。

「……ねぇ、椋は?」
「…………んだって?」
「おにいさんに伝言したあと、パチリスの子と一緒に出てったっきりなの。一緒じゃなかったの?」

クコナが眉を顰めた顔で聞いてくる。カイの中でその言葉を噛み砕き、理解して、目を見開いてしまった。

「…………居ない、のか?」
「お前が留守にしてる間にギルドバッチで連絡が取れるようになってる。それにも情報は上がってなかったはずだ」
「…っ!!」

カイの中に形容し難い感情が渦巻く。クソガキとはいえ、椋が信用する相手に任せたという情報が油断を齎したのか。自分の事情を優先させて、押し付けたからか。
様子が目に見えておかしくなったのを見たハゼが一先ず落ち着ける所へと促そうとした。その手を止めたのはまた別の声だった。

「……レグ……」
「!…カペラ!しっかりしろ」

漸く気が付いたらしいカペラを見る。変わらず胸元を苦しそうに抑えているが薄らと開くその双眸は確かにこちらを捉えていた。げほ、と血を吐きながら、咄嗟に手を伸ばしたハゼの手を借りてカペラは身体を起こしてみせた。

「……せん、じょうに。わたしを連れてって」

だが紡がれた言葉に再度目を見開いた。やっと手の届いたボロボロの幼馴染をもう一度この手で死地へ追いやれと。彼女は確かにそう言った。
バカを言うなと反射で叫びたくなった。だが同時に理由なくそんなことを言う奴ではないことも知っている。

「レグ…ルス……貴方も、星詠みなら、分かるでしょ」
「……だとしても、ンな身体で行かせられっかよ」
「あの子供は、《彼》と同じ。彼の《詩》なら、助け、られるはず。…………ネテュケルが、言っていたから」

げほ、と再び咳き込むカペラに二の次が出てこない。それに、と。

「わたしの手で、けじめをつける。足ぐらい、貸しなさいよ」

まるで子供の頃のように言われて、さっきまで内にあった何かは綺麗に吹き飛ばされた。
自分でも言った、切欠なんてそんなモンで十分だ。彼とは誰か、なんて聞く気は起きなかった。
心情を察したのか、クコナがぎゅっとカイの服を掴んだ。以前なら反射で振り払ったかもな、なんて変なことを考えて、もうそういう奴らじゃないことを分かってることに気持ちが不思議と落ち着いた。大丈夫だと告げて、念の為にマント下のコートからオレンを代わりに出してもらう。

「……妖精なら、もう飛んでったからな」

同じように布の切れ端を包帯代わりにカペラに巻いていたハゼがぼそりという。
──やっぱり、こいつに託して正解だった。

「───ああ。次は星見酒にでもしよう。皆でな」

レグルスとして、帰ってくる為に。

◆───

カイ&ニケの最終章ログイン!こちら【illust/120339168】から脱出後、救助を手伝うハゼさんクコナさんと遭遇しました。【illust/120122513】その後相棒を探しに再度戦地へ赴きます。
伝言はちゃんと届いていました。【illust/119071557
相談に乗ってくださったせっつんさんに改めて感謝を!

*二人の状態について
HPは赤ラインです。ニケを背負った状態で移動していますが、戦闘となった場合彼女は安全地帯に降ろしてカイが戦います。ニケはほぼ動けません。

◇赤晶石の呪縛解除方法
ネテュケルの傀儡となり呪いで蝕む赤晶石を無力化する方法は《詩》による“いやしのすず”を聴くことです。これは《詩》を扱える者なら無条件で行えます。
それ以外の方法で無理やり取り外したり破壊した場合、ネテュケルとセラの怨念が直接流れ込み廃人となりかねない程の苦痛を味わうこととなります。
*現状《詩》が扱える一族は確認されていません。

何かありましたらお気軽にご連絡ください。

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お借りしました!
ハゼさん【illust/115717473
クコナさん【illust/115717468

食べた木の実【illust/120016141

ニケ/カペラ【illust/115849425
カイ/レグルス【illust/115918544

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2024-07-13 10:12:10 +0000