創作プロジェクト「フラグメント」より小説『花と星』の挿絵です
以下小説の1部抜粋
帰り道、森を抜けて草原を歩きながら、わたしはどうやってフィオレナちゃんに話を切り出そうか迷っていた。断られちゃったら、寂しいし……やっぱり迷惑かもしれないし……とか、悩み慣れていないわたしの頭はこんがらがってパンク寸前だ。
「今日は手伝ってもらって、ありがとうございました」
フィオレナちゃんの言葉に、わたしは「全然っ!」と首を振って、ふと気づく。
「あれ? というかむしろ、わたしなにもしてないかも……」
「ふふ、そんなことないですよ。とっても楽しい道のりになりましたから」
「え? ほ、ほんと? それならよかったけどっ!」
そんなわたしの横で、ふとカオルさんが「ねぇ」とフィオレナちゃんに話しかけた。
「そういえばフィオレナちゃんは、どうして花を見て回る旅をしているの? 図鑑作りのため?」
わたしもその答えが気になってフィオレナちゃんの方を見た。
「――そうですね、それもありますが……実は、探している花があるんです」
もう日暮れ時だった。沈んでいく太陽がフィオレナちゃんの白い髪に金色の光を投げかけている。広い空はうっすらとオレンジ色だ。
「探している花?」
「ええ……ちょっと、見てもらえますか?」
フィオレナちゃんは、再び図鑑を取り出した。開いたのは、一番最初のページだ。覗き込んでみて、わたしたちは、あれ、と首を傾げる。
「……何にも書かれてないね?」
「はい、そうなんです」
そこには、他のページのように花のスケッチや解説はなく、ただ、端に小さく、「太陽ノ花」とあるだけだ。
「太陽ノ花って……?」
「……この図鑑は、父がその花を探すために出た旅の途中で記したものなんです。大陸最古の神話に記された、生き物に永遠の命を与えると言われた花です」
「……え、永遠の命……?」
わたしがそう繰り返すと、フィオレナちゃんは苦笑した。
「それについては、単なる伝説かもしれません。ですが……その花自体は、きっと実在するものだと、父は信じて探し続けていたんです。……けれど、見つけることはできずに亡くなりました」
「……そっかぁ、そうだったんだ……」
フィオレナちゃんは思いを馳せるように本を閉じ、その表紙を撫でる。
「……父は魔族でしたが、母は人族だったんです。である父と、その血をひいている私は寿命が長いですから……私たちよりも先に母は亡くなっていました」
ということはつまり、フィオレナちゃんは、人族と魔族、両方の血をひいているのかな?
確かにフィオレナちゃんは、あまり他に見かけない姿をしている。服装もだし、きらきらした白髪に、額からまっすぐ伸びた角。魔族なのかなと思っていたけど、お母さんは人族だったんだ……!
「それで今は、一人で旅をしているの?」
「はい。私は、父が探していた太陽ノ花を見つけたいと思っています……今もこの大陸のどこかにあるのかどうか……それは分かりませんが」
そんな話を聞いて、気づけばわたしはフィオレナちゃんの手を握りしめていた。
「テリシアさん?」
「ねぇ、フィオレナちゃんのその旅、わたしも手伝いたい! よかったら、わたしたちと一緒に来ない?」
「え?」
フィオレナちゃんはきょとんとして私を見る。
話を聞いて、いろんな迷いもどっかへいってしまった。一人でずっと旅をしてるフィオレナちゃんを手伝いたいって、ただそれだけの気持ちで、わたしは言葉を続ける。
「どんな探し物も、みんなで探したらきっと見つかるよ! 多分!」
それからゆっくり、その表情が和らいでいく。
「……それは嬉しいですけど、でも……」
ユウトとカオルの方を見回した。
「……皆さんの旅の邪魔になってしまうかもしれませんし……」
「そんなことないよ! ね?」
だって、みんなは……誰もが笑ったわたしの夢を一度も笑ったりしなかった。それどころか応援したいって、仲間に入れてくれた人たちなんだから。
「私はむしろ、フィオレナちゃんが来てくれたらすっごく助かるな~って思ってたよ! ね? ユウトくん」
「……まあ、そうだな。だが……俺たちは……」
と、ユウトくんは少し困ったような顔をした。
そうだ、一緒に行くってことは、わたしたちの旅の目的……そして、ユウトとカオルたちのことを話さなきゃいけない。
「……みなさんも、なにか旅の事情があるんですよね? ……よかったら、聞かせてくれませんか?」
それを察したように、フィオレナちゃんは尋ねた。意を決したように、ユウトは口を開く。
「実は――」
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2024-07-10 13:30:57 +0000