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■上■イイーキルス
「一体、なんだってこんな、何なんだっていうのさ!」
イイーキルス城周辺に居たアザレアは、水場ばかりを気にしていたので、
カレーを持ってきた この謎のカブトの一言を言われて ようやく気が付いたのだ。
空に穴が開き、気が付いたら音もなく紙吹雪のようなものがハラハラと舞っている。
きっと誰かが、アンコールのような支援技を使ったのだろう。…と気にも留めなかった。
しかし、その紙切れは、まるでケイオスの群体のように群れをなし、空を舞い始めていた。
あの小さい紙切れ、なんか…変じゃ…? と、考える前に、風も音も無く
スーツの張りぼての腕が吹っ飛んだ。…これはあれだ、厄介なのが増えたわけだ。
「まずい、まずいよ!この感じ、まるで陸版のケイオスだ!肉をそがれるよ!」
「嫌です~!こんなところでカレーの具材になりたかないです~!!」
つじぎり…?えアカッター…?え、何が、何なんだあれは!
こんな大事な日に、スーツを壊すだなんて、信じられない!許さないよ!
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■中■シルヴァチカ
「あれは…あれは、そう、紙、紙のやつ…!大丈夫!ボクとオネーチャンの炎で簡単に行けちゃう!」
なんてタイプ相性のばつぐんのが来てくれたのか…!あのでかいのが来てたらと思うと、冷や汗が止まらない。
運命の出目はきっと見方をしてくれた…! ただ、なんでもかんでも 自分の切れ味を試して
自慢なのか、そういうスポーツなのか知らないケド、やたらめったら切りつけてくるやつらだった、はずだ。
弱点は、たぶん、見た目もそうだけど 「火」 前回と同じで、記憶のメモがそう教えてくれる。
さいわい、シルヴァチカのみんなの多くは 皆、炎技が使える!
数は多いかもしれないが、ひの子やマジカルフレイムで おそらく簡単にのせれる連中で…
「 」
「 」
…そこまで伝えて、トコのおねーちゃも、ユキノのオネーチャたちも体調は万全でないものの、
みな、技の準備や、守る・みきりの準備をしている。
ナグのパパや、トガ兄も同じだと思う。傍にいる、チドリさんやニワくんやジャックも
きっとそう みんなここ、シルヴァチカを守りたいんだ。
みんなの張り切ってる、きっと大丈夫という顔を見てボクは、プラムは、
―ゾっとした。
「…だめ。やっぱりだめ。だめ!」
いきなり大きな声を出して、その場の雰囲気をぶち壊してしまったボク、
トコハナさんが、まっさきに飛んでくる。 だめ、今の無し、みんな家に入って、絶対テ来ないで。
「よくきいて、ほしいの。お願いだから、本当に、守ってほしい。」
「あいつは、その…特殊な壁を貼ってきて、きっとみんな歯が立たない。
…なんなら跳ね返ってきて、それがあたりに散らばって、大惨事になるかもしれない。」
ぼくは「すりぬけ」だからそんなのへっちゃらなんだ。とそれっぽい事をいう。
―嘘を ついた。
…ジャック以外、みんなお家に入って、一番壁から離れた場所で 一か所になって、守るや 見切りをしてて。
お姉ちゃんたちを、ちゃんと守ってほしいの。絶対。
ごめんねジャック巻き込んで…ぼくにはわかるんだよ、 だって、そいういう種族だから。
きっと… 寿命はもうすぐなのに。 ごめんね。…でもね、一人だと、少し怖いんだ。
…ボクは、以前、「やきつくす▼」でジャックを攻撃した時、焦げたりしなかった。
…でも、もしかしたらニワ君やトコハナちゃんたちは、こげちゃうかもしれない。
アレは、全体技なの、だから、広い場所で使うと、制御がきかないかもしれない。
ジャックにムチ打つつもりはなかったが、現状で、もし花や木に引火や
燃えカスが飛び散ったりしたら、それを防いでほしい… だめ、他の人にはできないこと…。
・・・・・・みんな、もうおうち入ったかな。
「ごめんね、ジャック、ボク、理由は皆に言えなかった。きっと言ったら、みんな思い出しちゃう」
大丈夫、このくらいの数、すぐにやっつけれるから…!
「……ばか…バカバカおたんこなすの、この、紙切れーーーーーッ!」
複数飛んでいた 紙は とてもよく燃えた。
みんなよく燃えた。 顔が無くて良かった。
ぼくは、初めて 生き物を 「やきつく」 した。
沢山をまもるため、ボクは戦うんだ…!
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■下■タマブシハウス中庭
「…残って、あの子たち、鉄棺の子たちを見るとは言ったわよ…?」
でもね、こんなの、大外れのファンブルよ。
ここは隠れ家、だれも来ない、ただ、上からは丸見えの間抜け家。
ほら言ったじゃない…上から降って降るだなんてバカみたい。
「くそ…大人数だと目立つと思って、遠慮したのが仇になった…ほんとに」
モブリルたちを見送ってしばらく、地鳴りが少しやんだタイミングを見計らって
この子らを連れて避難しようとしたら、こうなったワケ。 ひどくない?!
今、あの扉を閉めにいったら、このおどけたやつもきっと一緒についてくる。
あの扉は中からは閉められないし、なんなら、
きっとあの子たちは閉め方も知らない。
胸の玉もはぎとられて、ズタズタのふらふらで、もうだめそう。
そうしているうちに一人、また一人、向こうで、切るところのない体を切り刻まれて 悲鳴が上がる。
…よそ見をして目の前の この、これの動きを見ていなかった。
「ドガドーン!!」
きれいな花火が イイーキルス城の後ろの山に上がった。
2024-07-08 19:14:50 +0000