熊野から呪文の書を受け取った老女が語る。
「四日ほど前にあんたみたいな旅人がここを訪れたんだ。私が見つけたとき、その盗人は私の呪文書を漁っていたのさ。捕まえようとしたんだけど逃げられてしまってねぇ…消えたときの速さからしてあの男は魔術師だったんだろうね。老化の魔法をかけたんだけど、効いていなかったみたいだねぇ」
老女は呪文の書を取り戻してくれたことを感謝すると、じろりとジャンのほうを見る。
「それじゃ、この魔法がどれだけ有効な魔法か実践して見せようじゃないか」
「「えっ!?」」
ジャンの目が一瞬点になるが老女はそのまま呪文書を手に呪文を唱え始める。
「ちょ、ちょっとお婆さん!?」
熊野が制止しようとするが…
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
いきなりジャンは金切り声を上げて信じられないようなスピードで小屋の外に飛び去り、そのまま遠くへと消え去っていった。
「ふぅ、ミニマイトがいなくなってこれで一安心。あんたも魔法使いだろ?あいつがいてここまで来るのに苦労したんじゃないのかい?安心おし、あいつがいなくなったからもう自由に魔法が使えるよ」
にっこりと熊野に微笑む老婆。
「…あのー…とっても申し訳ないのですけれど…私、魔法使いじゃないですの…」
「えっ?」
熊野の返事にひきつった笑顔で固まる老女。
「付きまとわれてたんじゃなくて本当に友達だったのかい?悪いことしちゃったねぇ…」
「いえ、気になさらなくて大丈夫ですわ。ただの行き連れになっただけですし、途中ちょっとウザかったですから…」
「まあ大丈夫!あの魔法は命を奪うような類のもんじゃないから、きっと元気だよ、うん!あはははっ!!」
老女が笑ってごまかすと熊野も半分呆れた様子で愛想笑いすると老女に別れを告げ、旅を続けることにする。
そして熊野の目の前には…ハーフオークの一族であるスヴィンたちが住む村トレパーニが見えてきた。
2024-07-06 22:11:11 +0000