『別の世界へと旅立つ』
借宿はその目的を吐露した。私の頭によぎったもの、それは躊躇いだった。
この世界に未練なんてない、新たな世界にはあの子を迎え入れてくれる場所があるかもしれない。
それでも、未知の世界へと足を踏み出すことに恐れを抱いた。
ココロを捨てても、脳にこびり付いた支配はこそぎ落としきれないらしい。
「私たちがクレマチスの門戸を破るのに…どれだけの覚悟が必要だったか」
不意に一人の人間の顔がよぎった。真っ白で、純粋で、無垢で、恐れなど知らない笑顔。
思えば、私たちはあの男に支配されてたのではないか。
恐怖による支配、優しさによる支配、そこに何の違いがあろうか。
新たな世界へ旅立ったとて、あの子は彼の支配を振り払うことができるのだろうか。
例え、それが彼の真意でなかったとしても……私は……
「許さない…あなただけは…絶対に」
あの男に投げかけた言葉を、もう一度口にする。
過去は精算しなければ、私たちは新たな世界に旅立つことなどできない。
そう、自分に、あの子に、言い聞かせるように。
「おー」
◆お借りしました、オーちゃん【illust/115710649】
置いていく…はずだったのに!このまま新世界まで行く?
◆ヒュプノス【illust/118609625】
2024-06-27 02:15:31 +0000