フランカーと名乗ったヘタレ襲撃者を退けて旅をつづけ、道沿いの丘の斜面を登る熊野とジャン。
絶え間なく、うるさく話しかけてくるジャンに苛立ち始めた熊野だったが、目の前にポツンと一軒の民家がわれ、戸口の階段に恰幅の良い老婆がおり二人を手招きする。
「旅の方たち、良かったら寄っていきなさい」
「何の御用でしょうか、お婆さん?」
「歩き疲れて喉も乾いているでしょう、お茶でも飲んでいきなさい」
老婆はニコニコしながら二人を家に招き入れ、椅子に座らせる。
「一人暮らしは寂しくてね、ちょうど話し相手が欲しかったのさ。今お茶を淹れるからね」
そういって老婆は足を引きずって台所へと行き、大きなカップ二つと小さなカップ一つを運んできた。
「…熊野、ちょっと怪しいよ、このお婆さん」
そういったジャンを老婆は睨みつけ、ミニマイトどもは大嫌いだ!と怒鳴ってから台所に忘れたポットを取りに行った。
「そう疑うものではなくてよ?確かに、どこかの世紀末の漫画に似たシチュエーションで『お前のようなババアがいるか』って敵の正体を見破ったシーンがありましたけれど…」
そういいながら目のまえに出された紅茶を飲んだ熊野は目を輝かせた。
「あら美味しい!こんなおいしい紅茶なんてなかなかありませんわよ…!金剛さんに飲ませてあげたら大喜びしそうですわね!」
体力点1回復、そして正しい選択をしたため運点1回復。
三人で談笑していると、そのうち老婆の動きが鈍くなり始める。
老婆はしきりに熊野の旅の目的や生まれた世界のことを聞いていたが、そのうちよろよろと台所に行くと別の飲み物を一気に飲み干した。やがてテーブルに戻ってきた老婆は熊野に旅の途中で一人の老人であったかどうか、その老人は呪文の書を持っていたかどうかを聞いてきた。
「老人と言われましてもたくさんいましたけれど…呪文の書ならアナランドの前線基地を出てすぐのところで助けたお爺さんが持っていてお礼に渡されましたわね」
そう言いながら熊野がバックから取り出した呪文の書の1ページを見た老婆はけらけらと陽気に笑いながらそれを熊野の手からひ受け取った。
2024-06-23 10:14:34 +0000