一時間ほど谷間に沿って丘を下っていく熊野。その後、道は緩い上り坂となっていた。
正午ごろになるとまた道は下り始める。
「止まって、熊野。誰かが君を見張っているような気配がするよ」
更に正午になって道を進むとそれまでひっきりなしにしゃべっていたジャンが警告を発した。
森の中にいるため、用心しながら進む熊野とジャン。
その時である!二人の目の前に突然黒づくめの長身の男が飛び出してきた!!(ナレーター:政宗一成)
立ちはだかる男は偃月刀を無言で引き抜く。
「あら、随分穏やかじゃありませんわね…まあお話なんてするつもりはありませんわよね?」
熊野の言葉を無視すると、男は突然襲い掛かってきた!
暗殺者 技術点:8 体力点:6
熊野は男の攻撃をかわし、横なぎに剣を繰り出す。それが男の脇腹をかすめると男は思いがけない攻撃に少々たじろぐ。
しかし、すぐに構えなおすと偃月刀を大きく振りかぶり…
「とおぉぉぉ↑ぉぉぉぉ↓!!」
一瞬身をかがめながらの熊野の前蹴りが男の腹にさく裂、自らの勢いも手伝ってカウンターとなり後ろの吹っ飛びながら尻もちを搗く男。
「!!?」
男が痛みと衝撃をこらえ、腹を抑えつつ体制を整えようとしたところに、首筋に冷たい刃が当てられる。
「…知っていて?相手を討っていいのは自分が討たれる覚悟がある者だけでしてよ?」
冷たく見下ろし、低いトーンで冷徹に言い放つ熊野…それに男の顔が青ざめた。
「ま、待ってくれ!降参だ!もうあんたに手出しはしない!この通りだ!命だけは、命だけは助けてくれ!!」
熊野は突然哀れに命乞いを始める男を尻目に剣を鞘に納める。
「それで?なんで突然私を襲おうとしたのかしら?」
「あぁ…ありがとう!!あんたの優しさには一生感謝するよ!!…俺はフランカー。暗殺者であり盗賊なのさ」
フランカーと名乗った男は傷をいたわりながら立ち上がる。
「すまない、あんたを襲ったのは…暗殺の練習にちょうどいいと思ったんだ…女相手なら対して強くもないだろうと高をくくってな…それがこのザマさ…あんたの慈悲に報いるためにも、俺を仲間にしてくれ!」
「そう…私は最上型重巡洋艦四番艦の熊野ですわ。今後はこんなマネはなさらないでくださる?」
「あぁ…もう、こんなマネはしないよ、こりごりだ」
港湾都市カーレに向かうフランカーは再開の約束をすると、立ち去って行った。
2024-06-16 12:25:00 +0000