最終日ですが、3章後半【illust/119083717】の一幕。
エメラルドの怪物【illust/119098744】にてエネミーと遭遇。元がひ弱で抵抗手段がない(テリーには効果がない技を覚えていた)人間だったため、一時的に正気を失ったテリーが絞めて転がしました。(その間、積積積積を従者さん達に丸投げ)
この後、神託に従って目を集めていきます。
【illust/119462543】にて辻エンカを頂きましたが、今回の話では触れていません。申し訳ございません。
(時系列:つまづきの【illust/118786994】→友達を探して【illust/119462543】→渾沌イーリディーム後半【illust/119170503】→イマココ)
不都合等ございましたらパラレル・スルー扱い、またはメッセージからご一報をお願い致します。
テリー【illust/115898096】
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迷宮城内で一人の人間が歩いていた。
かつては集落内で、今では水面や鏡越しに見る少年の姿で。
かつて殺めたはずの人間が生きて目の前にいる。本来ならあり得ない光景によって、俺の正気は大きく削れた。
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気がつくと、背中の皮の切れ目から蔓を伸ばし、お前の首を締めていた。
初めて誰かを殺めた、あの日と同じように。
「この蔓…テリー?」
双眸の翠玉が俺を見つめる。お前の瞳はこんなに明るく輝いた色をしていない。
お前は赤いリボンなんて可愛らしい物を身につけようとしない。
消えてくれ、紛い物の色で俺を見ないでくれ。
「……ヤイト、様」
「どうして、僕になってるか…分からないけど……また同じよ、に、殺すん、だね」
お前は首を締め上げる蔓を解こうと足掻くも、隙間すら作ることができない。短く切り揃えられた爪が僅かに蔓に食い込むだけ。
「僕、テ-……に…悪いこ……し…?」
集落のpkモンの総称“テー”
忌々しいその呼び方で俺を呼ぶな。
お前からすれば、悪い事は何一つしていないだろう。
俺達に優しく接していたのに、本当は集落の人間と同じように俺達を“奴隷”として見ていた事も。
内乱のどさくさに紛れて集落から逃げ出そうとしたあの日、俺を無理やり連れ戻そうとした事も。
目の前にいる翠玉の紛い物を呪うように、のろいを、鈍いを重ねて、蔓に更なる力を込める。途切れ途切れの声と笛の様な音は徐々に濁って聞こえなくなっていく。
「……くたばれ、紛い者」
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本物のお前は、あの日に俺が殺した。
本物のお前から剥いだ皮を使って、シャイコース様が、イイーキルスが、俺にこの姿を与えてくださった。
結局、俺はあの日と同じように翠玉の紛い物を殺めた。かつては信じていた人間と同じ姿を、同じように首を絞め上げて。あの日と違うのは、力を込めすぎて首が少し潰れている事か。
動かなくなった紛い物を呆然と眺めていると、ポンと肩を叩かれる。
振り向くと、従者さん達とその後ろに動かなくなった城壁に化けていた怪物。俺が紛い物と対峙していた間に、従者さん達が無力化していたようだ。
ーーそうだ、新たな神託を賜ってたんだ。城壁に化けた怪物の目を集めないと。
自ら殺めた紛い物を一瞥すると、賜った神託に従うために動かなくなった怪物の方に駆け寄る。
翠玉の紛い物に抵抗された時にジャボが解け、隠していた赤黒い痕が露わになっていることに気づくのは少し後の事。
2024-06-09 12:15:02 +0000