入学式のスケジュールを終え、教室を後にする。
環境が変わり少し新鮮な気分にこそなれど
心持ちは義務教育の時と何ら変わらない。
なんとなく過ぎていくであろうこれからの三年を想像して歩く
「てなワケで先生、ではで~は~!!」
廊下を歩いていると、すぐ近くの教室から目を疑うような
格好の女の子が突然出てきてぶつかりそうになる。
二色に分かれた髪、大きな髪飾り、短いスカートに
派手な色のニーハイソックスetc...
校則違反のオンパレードだが、ここまではいい。
それよりも先に目に入ったのは
頭一つ分もあろうかという巨大な耳、
マントのような制服と一体化した羽根。
不思議な色の瞳は反射ではなくそれ自体が
ほのかに光っているように見えた。
コウモリだ。
人の姿を一目見て出てきた印象が、コウモリ。失礼だろうか。
(式の時こんな子いたか…?コスプレ…?)
困惑しつつもひきつった笑顔で会釈し、通り過ぎようとするが
バッ
と何故か立ちはだかる女の子。
左右に動きながらこちらの様子を伺う。
まじまじと見つめる仕草は格好も相まって動物そのものだ。
一方猛獣に睨まれたかのように硬直するヒトの情けなさたるや。
ひとしきり観察した後、
彼女はうんうんと満足したようにこう言った。
「キミ、今日からウサの眷属ね!!」
どうやら俺は入学初日からコウモリ娘のしもべになったらしい。
2024-05-30 12:13:28 +0000