【ゼクシード】アンチューサ【交流】

ひなささみ

カサカサと葉の擦れる音が響く森の中。クレマチスはギルドの命に従い痕跡集めをしていた。周りには誰もいない。流石に寂しくなってきたクレマチスは、別のことを考えその感情を紛らわそうとした。

真っ先に浮かんだのはあの時の情景。花食みであろうイベルタルに花を差し出した事だった。隣に座る彼女がぐうぅと音を鳴らし、あわあわとする姿が少し面白かった。自分の花の香りにあてられたのだろうか。
ぼうっとした様子だった彼女に腹を空かせたままでは辛かろと、目に生えている花を捥ぎ取り食べさせた。あの時の彼女の表情は忘れたくても忘れられないだろう。
惚けたような、恍惚とも言える表情だったのだから。自分の花を食べてこんな表情をしたのは彼女が初めてだった。
なぜこんな表情をするのだろうとうっすら思いながら眺めていた時、彼女が口を開いた。

「とても、美味しい花だった」
「それは良かった」

食べ終わって感謝を伝えてくれる、なんて礼儀の正しいひとなのだろう。差し出したこちらとしても嬉しいものだ。

「クレマチス、貴方は…」

彼女が何か言いかけたが、丁度ギルドの集合合図である鈴の音が響いた。クレマチスは聞こえなかったフリをして立ち上がる。

「どうやら始まるみたいだね、行こうか」
「…っ、そうだな」

何か言いたげな表情をしていた彼女を追い越し、会議場所へと向かった。

回想から現実へと戻ったクレマチスは、あの時彼女が言いかけたことをもう一度考えてみる。
…暫くして、ある一つの仮説に辿り着く。その瞬間、クレマチスは顔を歪め頭をぶんぶんと振った。

ーそんな事があってはならない。あってももう、わたしは……

太陽が木々を照らし、木漏れ日が溢れる森の中。
あんな思いをするのは御免だと、クレマチスは心の中でつぶやいた。

こちらの交流【illust/118926324】のお返しとなります!
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お借りしました
タドミールさん【illust/118797876

クレマチス【illust/118903000

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2024-05-22 13:57:47 +0000