のんさんin映画『私をくいとめて』①

長崎好太郎

31歳の私、黒田みつ子は脳内相談役Aの正しいアンサーで、おひとりさま生活を満喫している。恋人はいない。付き合って男女の仲になるのがどうしても想像できないし、積極的な気持ちもわかない。男友達のままの関係が心地いいから、それ以上は「私をくいとめて」と叫びたくなる。

食べ物の模造品や食玩好きの私は、模造のえび天を作るために合羽橋まで出向き食品サンプル作りの一日体験講座に参加した。手元には寸胴鍋にたっぷりと沸かしたお湯。赤い縞模様の模造のエビをそのお湯に浮かせ、エビに向かって小麦色のロウを高い位置 からポトポトと垂らす。ただのロウがたちまち天ぷらの衣のようにふわふわに固まり、それをエビにくるりと巻きつけると、 新鮮なエビの天ぷらが出来上がった。

お家に帰って。
「ナイスなサタデーであった」
「偽物の天ぷらは合羽橋まで出向いて作るのに、本物はデパ地下で調達しちゃうんですね…キッチン棚の下にしまいましょう。あそこならラップ取り出す時に見られるし」(男性の声)
「うん、そうする」
「本当ですか。テレビの前に飾ろうとか考えていませんでしたか」
「考えてない」
Aは私の気持ちを察するのがうまい。当たり前だ、Aはもう一人の私だから。

#のん#私をくいとめて

2024-05-14 11:30:08 +0000