クリスタタンティの村を出て丘に向かう蛇行した道をたどる熊野。
午前一杯歩くと分かれ道に差し掛かり、そこの標識にはまっすぐ進むとダンパスの村、西はアリアンナとあった。
「あの女が家にいたら頭を使わねばらんぞ」
不意に昨夜酒場で呑み交わした老人の言葉が頭をよぎる。
「…なんか面白そうですわね」
ふと好奇心に駆られた熊野は「アリアンナ」と差された方角に進んでみる。
しばらくすると森の開けた中にこぎれいな家があり、絵になる光景に見とれる熊野。
「ごめん下さい、どなたかいらっしゃいませんか?」
ドアをたたいてみたものの返事がない。
「…ドアに鍵が掛かってない…?誰もいらっしゃらないのかしら?勝手にお邪魔しちゃいますわよ?」
不審に思った熊野が家に入ってみると家の中はきちんと片付けられており、椅子はテーブルの周りを囲み、部屋の一角にはマットレスがある。台所の広さを見るに、住人はよほどの料理好きなのだろう。
部屋の隅の戸棚の陰からすすり泣く声がするのに気づき覗いてみると…
そこにはなんと檻があり、若い女が閉じ込められていた。
「親切な旅人さん、ここから出してください!二日前にいたずら好きなエルヴィンたちにここに閉じ込められたままなのです!どうか…お願いします!」
(…そもそもなんで家の中にこんな檻があるのかしら…)と内心ツッコミながら武器を抜く熊野。
「危ないから後ろに下がってもらってよろしいかしら?」
熊野の一撃は見事に檻の錠前を切断して彼女を無事檻から出すことに成功したが、刀身が少し欠けたことには気づかなかった。
「旅の方、私はあなたに借りができました。このアリアンナ、あなたに報いましょう!」
アリアンナと名乗った女はそういうと、何やら箱を持ち出してきた。
2024-05-02 10:40:35 +0000