「姫様は何処か? 敵はもうそこまで迫っているのだぞ!」
「フューレ様、ご安心ください。姫様は護衛と共に地下の隠し通路へ向かわれました!」
「そうか、よくやってくれた」
部下である近衛兵の報告を受けたフューレは、ほんのわずかに安堵の表情を見せた。
「姑息な手を使う蛮族どもが」
唇を噛んだ彼女は再び表情を引き締めると、怒号が飛び交い激しい剣戟の音がやまぬ眼下の戦場を見下ろした。
「…あとは姫様が逃げおおせられるまでの時間を稼げばよいか」
国は再び興せばよい。
いや、姫様さえご無事なら彼女にとって国などどうでもいいのかもしれない。
フューレは肺の中いっぱいに大きく息を吸い込んだ。
「ここは私が引き受ける、誰ぞ私の剣と鎧を持てっ!」
【ヴィゼンディア・ワールド・ストーリー】
2024-04-30 11:34:12 +0000