佳長師範との修行を終え、「御満光壊流」を会得したるりまは、道場を出たその足である場所へと向かった。人里から少し離れた山中、そこには佳長師範から紹介された刀匠が住んでいる。
空に昇る煙を頼りに竹林を進むと、聞いた通りの一軒家が果たしてそこにあった。
「ごめんください」
火の匂いのする家の戸口に立ち、声をかけるとすぐに返事があり、出てきたのは一人の男。彼が刀匠「福島 豊」であった。
「お客様ぁ、一体どんな御用でしょうか?」
「私るりまと言います。佳長師範から紹介されて来ました」
「なんと、あなたが師範の手紙あったるりまさんなんですねぇ!随分可愛らしい!」
「いやそんな…!そ、それでここに来たのは…」
「もぉちろん伺ってますよぉ!あなたの刀を打って欲しいと」
「そうなんです!」
「お任せ下さい!ただね、刀と言ってもその人の求める重さ、切れ味、形、色々ですよねぇ?そこで大切なのが、ジャン!」
福島は刀を二本取って見せる。
「手合わせなんですね!刀を交えて、本気の戦い方を見て始めて、その人の求める刀の姿が、わかるんです!では行きますよぉ!」
るりまは呆気に取られたまま、小屋から出ていく福島の後を追った。
さほど遠くない竹やぶの開けた場所で向かい合うと、福島は刀をるりまへと投げ渡す。
「あの、これ真剣ですよね?」
「ご安心ください!刃は潰してある失敗作ですから、多少扱いにくいですが、乱暴に扱っても大丈夫なんです!」
「…こんな事言うのもなんですが、ご存知の通り私、師範の元で「御満光壊流」を、その前には別の流派も身につけています。福島さんと戦うにはその…」
「力の差があるように見えますか?」
「え?」
「相対した相手の力量を正確に測れるようになるには才能以上に実戦の経験が大切なんです。」
どっ、と周囲の空気が重くなる。この時になって初めて、るりまは目の前の男がただの刀鍛冶で無い事を知った。そして福島のとった構えを見て、るりまは感じていた違和感の正体に気が付く。それは「御満光壊流」の、るりまと同じ構えであった。
「(師範って呼び方は、そういう…関係だったのか…!)」
「事情は聞いていますが、復讐の為に刀を持つのなら、それ相応の覚悟が必要だということを伝える必要があるんです。刀に携わる者として、そして同じ流派を学んだ剣士として、さあご覧ください、いきますよ」
「くっ…!お覚悟を!」
2024-04-27 08:18:08 +0000