【花咲きほこらば, 散るは必定・・・。月満ちたれば, 欠け逝く定め・・・。 待てば良い。わたくしが待てれば良いだけ。あの方は必ず、お戻りになる・・・。私たちが愛し合ったあの時を、源氏の君がが忘れるはずがない・・・。】
「持ち重りのする香り・・・。源氏の君はそう言って寝ている六条様を横目に屋敷を立ち去ってゆきました。立ち去り際に侍女である私をお口説きになって・・・。その後起きられた六条様は私に、源氏の君は帰りに何と申されていたのか?としきりに聞いてこられましたが、背筋が凍り付いて生きた心地がしませんでした。そなたの方が好みだから、口直しに今宵一献・・・と申されていましたなどと誰が言えましょう?・・・それにしても、ねちねちとした酷い香り・・・。ケシの実を香に使っているとのお噂ですが・・・。この噎せ返る感じでは、犬猫ですらその匂いに嫌いがありましょうや・・・。」
2024-04-21 10:17:38 +0000