杏「⋯⋯⋯で?」
仕事帰りに日和はいつもの喫茶店を訪れていた
日和「いや、私とおとーさん、結婚するから」
杏「そ」
杏の態度は素っ気ない
日和「うん、ごめん」
杏「謝らないでよ。⋯そりゃあ、あたしだって俊さんのこと好きで、えっちもして貰ったくらいだけどさ」
日和「だから、ごめん」
杏「だーかーらー。そんなにやましい気で俊さん取ったの!?違うでしょ!?」
日和「それ以外出てこなくて」
杏「だったらそれでいいじゃん、確かに話してくれたのは嬉しいけどさ、そこまで謝られちゃうと、あたしの立つ瀬が無いじゃない」
日和「でもぉ⋯」
杏「だってもでももない、俊さんは日和を選んだ、日和はソレを受け入れた、結果的にあたしはフラれた、⋯それ以外になんかある!?」
日和「ない、ねえ」
杏「そーゆーこと!これ以上今日はやめて」
日和「⋯うん、わかった。ありがとう」
杏「はいはい、ありがとうございましたー」
⋯
⋯⋯
⋯⋯⋯
(日和side)
半ば強制的に店から追い出される格好になった日和だったが、気分は晴れなかった
日和(ケジメをつけるためとはいえ⋯)
なんかモヤモヤする。果たして私の取った行動は正しかったのだろうか⋯
日和(でも、おとーさん、こないだ杏と出掛けて、ゴムありでヤッたって話してくれたんだよなあ⋯、まぁ、もう不倫まがいなことはしないだろうからいいんだけどさ、知ってたし)
なんだか複雑だ。⋯世の中の女なら、なんであんな娘とヤッたのよ!?と激怒するところだろうが、そもそも論おとーさんとのセックスを焚き付けたのは自分だし、杏の本気の気持ちも知ってたし⋯
日和(あー!わかんなーい!!)
(杏side)
杏「⋯あーあ、失恋しちゃった」
誰も客がいない店内でぼやいてみた。思わず、先日の日帰り温泉旅行のことを思い出す
杏(あの温泉旅行が、俊さんなりのケジメだったんだろうなあ)
思い返せば、安全日を選んだにも関わらずゴムをきっちり付けていたし、オマケに装着してたにも関わらず外で果てていた。今思えば、コレが最後と言わんばかりの行動だったのだ
杏(あーあ、日和にバレちゃえ)
はぁ、とため息をつく。下腹部を手のひらでさすると、涙がじんわりとにじむ。
マスター「⋯杏、今日もう客もいないし、上がれ」
杏「叔父さん、ありがとう⋯」
エプロンを外すと、顔を隠すようにして涙を拭いたのだった。
2024-04-16 12:37:27 +0000