酔ってないよ~

とみた

「ゴイスー満開!」
 見ごろを迎えた桜が、あたたかな日差しを受けて優しく笑っている。「こんにちは~」と声をかければ、桜吹雪で返してくれた。
「飲みすぎじゃねーのか?」
 千空ちゃんはそう言って、俺からお酒を取り上げようとする。でも残念でした。俺の妖術でもう中身はからっぽなんだよね。そもそも全然酔ってないし。俺は妖狐だよ?
「俺が酔ってるだなんて、千空ちゃんこそ酔ってて視界がぶれてるんじゃない? 俺のどこが」
 ガクンという衝撃の後、目の前にピンクの混じる青空が見えた。
「そうやって、何もねーのに転ぶとこだよ。尻尾がクッションになって命拾いしたな」
 クククと笑う千空ちゃんが、横に腰掛ける。「そのまま寝とけ」だって。せっかくのお花見なのにもったいないじゃん。でも、この陽気のせいかジーマーで眠くなってきちゃった。ちょっとだけならいいかなぁ。
「30分経ったらちゅうで起こして~」
「テメー、俺以外のやつと絶対酒飲むなよ」
「……なんで?」
 すぅと意識が遠のいていく中で、かろうじて声を絞り出した。ん~やっぱり俺酔ってるのかも。今日はお酒を一滴も飲んでない千空ちゃんの顔が、真っ赤に見える。だから、続けて聞こえてきたセリフも、幻聴か何かかも。

「お可愛いのがバレるから」

 こんなの聞き間違いだよねぇ。でも本当に言ってくれたんだったら、ちょっと嬉しいかも。なーんて思いながら、ふわふわした気分の中、俺は眠りについたのだった。

#Dr. Stone yaoi#SenGen#鬼+狐

2024-04-12 06:08:43 +0000