世紀末の農場は

さかいきしお
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『ブラックピース、応答せよ』

「こちらブラックピースリーダー」

『現地民兵部隊が、森の中の秘密農場へ移動している
 至急追跡して農場を偵察せよ
 監視は厳しいらしい
 少人数で実行せよ』

森と農地が入り混じったあたりでパトロール任務に就いていた俺たちに指令が入電する

「これより、追跡、偵察任務を実施する
俺が出る、もう一人とバディを組むが・・・」

そこで部下たちを見ると、なぜかみんな目をそらしやがる

「隊長殿、進言してよろしいでしょうか」

部下の中では年かさの、といっても俺より一回り以上年下の女性軍曹が口をはさむ。

有能な下士官の進言には耳を貸さないといけないのだが

「少尉殿に随行して頂くのがよろしいかと愚考いたします。残存部隊は小官が指揮いたします」

なんでこいつらは上から下までそろって、この脳筋金髪馬頭をくっつけようとする?

「はい。軍曹の言うとおりだと思います。隊長、お供いたします」

いつもの黒ワンピース姿の、副長を務める金髪ポニーテールが進み出る。

こいつと一緒だと何か悪い予感もするが、今日は街中じゃないから大丈夫だろう

「あいつらだな」

見た目はバイカーギャングといった格好の連中が、
それぞれ車やオートバイに乗り、爆音を立てながら田舎道を爆走している
ライダースーツを着ているものもいれば、上半身裸、
なぜだが、チェーンやベルトを巻きつけたボンテージファッションの者たちもいる。
夜のいかがわしい街ではなく、それなりにのどかな農村だ

「よし、距離をおいて森を迂回しながら接近する」

「了解」

森を抜けて視界が開けると、そこには。

現代の農村とは思えない光景が広がっていた

「ひゃはあ、みろ、このプリプリぴちぴちのトマトをよう。
 このつやと張りは、そこらの女なんぞ目じゃねーぜ!!」

トマトを両手に持って、奇声を上げる上半身裸の太った男
 
「げへへへへ、おれはこっちのナスにするぜ!!ひひひ!!こりゃ俺様の得物より立派だぜ!!黒くてぶっとくて、ぐいんと長い!! こんなもの突っ込まれちまったら、いっちまうぜ!!」

ナスに、舌なめずりしながら頬ずりする、モヒカン頭

「ぎゃあはははは!!見ろや、このでっかいかぼちゃをよ!!こんなでかぶつ的にして銃ぶっぱなしゃあ、ババアがライフルで狙ったって木っ端みじんだぜ」

バカでっかいかぼちゃを空中に放りながらはしゃぐスキンヘッド

「うひひひひ、このピーマンときたらよう。こんな御大層ななりして中身空っぽだぜ。俺様の頭の方が詰まってるってもんだ」

ピーマン相手にマウントをとる、刺青を背負った髭男

まさに傍若無人、世紀末はまだ終わらないのか、といった風景が繰り広げている

「あっ、あいつら、農場をあらして」

「まっ、まて」

銃の安全装置を外そうとしている金髪を押しとどめる

そのとき、農場の隅の掘っ立て小屋が開くと、中から太ったな農夫が現れた。

「あんたたちのおかげで毎回助かっているよ。

 他に自分たちの畑もあるだろうに、私の畑まで手伝ってくれて。

 ハート様にもよろしく伝えておくれよ

 これ、少ないけど、あんたらで食べてよ」

「ひゃあは!!ありがたくもらっといてやるぜ」

モヒカンどもは、収穫を手伝っていた野菜を丁寧に籠に収めてから、
農夫の差し出した野菜にかぶりついた。

「野菜買っていくか」

「そうですね。ハート様のお店に行きましょう」

そのころ街にて

「ぶひひひひ。ハート印の新鮮な夏野菜ですよ

 私と手下どもが丹精込めて作りましたからね。
 
 美味しくて大きいきれいな夏野菜。
 
 お安くしておきますよ」

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2024-02-10 17:28:36 +0000