あれは確か四年前の……。獣使いの鬼が大時化の海で鮫の群れを俺に嗾けた時のことだった。海面から鮫が飛魚の如く飛び出したかと思うと、次の瞬間鯨が浮上するかのように海面が盛り上がった。鮫を叩きのめしたそれは鯨ではなく、紅く派手な水龍だった。そこから先は覚えていない。荒れ狂う波の中で舟にしがみつくのに精一杯だった。水龍が消えた時にはもう鬼もサメもいなくなっていたし、波も穏やかだった……。―――冨岡義勇より
2024-02-07 16:20:58 +0000