【第17話】
夜が白々と明け、まだ誰も目を覚ましていない静かな時間。
そんな世界で、ルナ・ランディーユは一人、世界樹ユグドラシルの元へと足を進めていた。
彼女が見上げるのは、天を貫くかのような、枝葉の大樹。
延々と続く樹皮に触れると、ルナの内に渦巻く想いが、ふっと軽くなった。
絵師さんが描くキャラクター達は、いつもルナに力を与えてくれた。
しかし、今、その瞳は、何色の水彩で描かれても暗闇を帯びてしまっていた。
土曜ブルーが去り、迎えるのは月曜の憂鬱。
絵師さんが抱える無形の闘い――ルナにはその存在がひしひしと伝わってくる。
「絵師さん、あなたが描く世界で、私は戦う理由を見つけたんです。その笑顔、私が守りますから。」
心の中でそう誓い、ヴィクトワールの力を呼び覚ます。
彼女はその力を秘めた胸を信じ、豪快に変身する。光り輝く強化服に身を包み、
ルナ・ランディーユはヴィクトワール・ヴァルキュルナへと姿を変えた。
孤独な戦いを強いられても、彼女の決意は揺るぎない。
ポケットには絵師さんが描いたイラストカードがある。
その一枚一枚が、彼女を戦いに駆り立てる。
絵師さんは、自室の窓辺に立っていた。
手にした筆は、もはや彼女の心を表現できずにいた。
「全てが霞んで見える...」
絵師さんの筆は、心の憂鬱を描き出すように、スローモーションのように動く。だが、
ヴィクトワール・ヴァルキュルナの戦いは、今、絵師さんため、彼女自身のために熱を帯び始めていく。
ユグドラシルの葉が、静かな力を秘めた光を放ち、ルナに囁く。
一人とは言え、この古木が信じられる存在であればそれでいい。
闇の勢力が渦巻く中、ルナは絵師さんの心に小さな希望の光を灯し続ける。
そして、月曜日の朝、ルナの言葉が絵師さんの心に届いた。
「絵師さんが無事なら、私は何があっても構いません。」
絵師さんは、その言葉に押されるように、手にした筆を動かし始める。
「これが私の、いえ、私たちの戦いです」
とルナの内面から湧き上がる言葉に、絵師さんもまた応える。
画面がぱっと明るくなり、絵師さんの手に再び力が入る。取り戻した笑顔はルナにとって最高の報酬だった。
二人の勇気ある戦いは、いつの日にも色褪せることはない。
絵師さんの描く世界を、物語を、ルナは今日も明日も、常に守り続けるのだった。
2024-01-14 15:01:29 +0000