荒廃した都市。かつて青白く光り輝く美しい摩天楼があった場所は、今もはや廃墟と化かし、その栄光の面影はなくなっていた。
高さ数十kmもある高層建築物は、ひび割れ砕けボロボロとなり、道路には亀裂が走り、橋は一部が崩壊している。
天の川銀河ウミトバナ宙域1227星系第三惑星アデカムは、宇宙戦争により破壊されてしまった。
戦争の業火が惑星全土を包み、破壊の暴風が大地を削った。
荒廃した都市を一人の男が歩いている。
エザライシム・ライガーは、灰色の空を見上げる。
「......」
切なそうな表情を浮かべ、溜息をつく。
ライガーの隣をオリオン軍の装甲車両の隊列が次々と通り過ぎていく。
ライガーの頭上、摩天楼の間を縫うようにガンシップ(宇宙戦闘機)が次々と駆け抜けていく。
その時、ライガーの肩を叩き、一人の男が話しかけた。
「ライガー、調子はどうだ」
「悪くない」
「そうか、これから待機地点まで移動する。お前も乗っていくか」
「ああ、そうさせてもらう、兄弟」
ライガーは、装甲兵員輸送車に乗り込んだ。
〜数時間後〜
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・
オリオン軍の戦車の轟音が大地を揺らす。
「総員、戦闘用意!」
「戦車隊前進せよ!」
「総員停止!」
「目標補足!」
「目標前方970m、直射可能距離」
「......撃てい!!!!」
ドドドドーーーーン!!!!
ハルダウンの状態から、オリオン軍の戦車隊が、一斉射撃をする。
遠方では凄まじい爆発が起こっている。
遙か彼方には、オリオン軍の宇宙戦艦が見える。
「歩兵部隊は市街地へと進撃!装甲部隊と連携し、地域の敵性脅威を排除、制圧せよ!」
ライガーらの分隊は、市街地へと侵入していく。
周辺には、黒い建物が立っている。恐らく何かの工業施設かもしれない。
ライガーが前を歩いている。
次の瞬間、敵のガンシップが空中から爆撃してきたのだ。
ドガアアアアアアアンンン!!!!
激しい爆風と熱線が当たりを包み込む。
「兄貴ァァァァ!!!!」
必死に走り、ライガーを探す。
すると、瓦礫の下にライガーが埋もれていた。
「兄さん!」
「......っ」
ライガーを瓦礫から引きずり出す。
ライガーは、軽く微笑んだ。
「......俺は大丈夫だ」
「あんたは?」
「俺も大丈夫だ」
「立てるか?」
「ああ、自力で立てる」
ライガーは、ゆっくり起き上がる。
ライガーの左肩を抱えて、起き上がるのを助けた。
「......他の奴らはどうだ?」
「まだ数名が生き残っています」
「分隊長から報告は?」
「応答がありません」
ライガーは、ゆっくりと歩いて、空を見上げる。
「爆撃か、厄介だな」
「次の二撃目が来るかもしれん、ここを離れるぞ」
その時、遠方から何かが近付いてくる。
「......っ!」
「......敵の戦車だ!退避退避!」
仲間が叫んだ。
敵の戦車が一両接近してきた。
「敵性装甲戦力と接触!歩兵部隊は防御態勢を展開!」
「装甲支援を要請!座標8799の7552!」
ヴァァァァァンンンン!!!!
次の瞬間、敵の戦車の主砲が放たれる。
強力なビームは、周辺にある建物を貫通し、巨大な穴を開けた。
「ここを離れるぞ!」
ライガーはそう叫ぶと、アサルトライフル(レーザー銃)を手に飛び出す。
その時、後退している途中、不運なことに、敵のアサルトドローンが二機現れた。
「クソ!ドローンだ!」
ライガーと男は、建物の陰へと飛び込んだ。
ドローンは重力圧殺攻撃(グラビティハンマー)で周辺の建物ごと押し潰して破壊した。
「走れ!」
二人は必死に走る。後ろからドローンが追跡してくる。重力圧殺砲を乱射し、周辺が次々と押し潰されていく。建物は瞬く間に押し潰され破壊され砂埃を上げる。
その時、ライガーが手榴弾をドローン目掛けて投げた。
手榴弾は、スラスターを噴射しドローンへと向かって衝突、爆発し青白いプラズマの火球を形成した。
しかし、ドローンのエネルギーシールド装置により、手榴弾による攻撃は防がれてしまったようだ。
ライガーは言った。「二手に別れる。俺がドローンを引きつける。その間にお前は背後に回り込んで撃破しろ!」
兄弟は、「分かった!」と叫んだ。
二人は十字路で左右に別れた。ライガーは、二機のドローン目掛けてアサルトライフルを射撃した。効果は薄いが、注意を引くことが出来た。
2024-01-12 06:42:30 +0000